『或る国のこよみ』をよんで・・・(下)

北村周一

世界は無限にふくざつな色に包まれてゐる・・・と、
片山廣子(広子)は、『或る国のこよみ』というエッセイの中で、
ケルトの古いこよみに触れて書いている。
十二ある月のそれぞれに、興味深いことばを当て嵌めながら、日本の古歌もいくつか紹介している。
そのことばの連なりに触発されて、十二の月を短歌にしてみようと思い立った。
けれども、一月から六月まで作ったところで息切れがしたので、
一年を前半と後半とに分けることにした。
そんなわけで、今回は七月から十二月までのこころみとなる。
もう一度、このエッセイの冒頭の部分を引用したい。

一月  霊はまだ目がさめぬ
二月  虹を織る
三月  雨のなかに微笑する
四月  白と緑の衣を着る
五月  世界の青春
六月  壮厳
七月  二つの世界にゐる
八月  色彩
九月  美を夢みる
十月  溜息する
十一月 おとろへる
十二月 眠る
  
  *

わたり来よ 霊を呼ぶ声絶えずしてふたつ世界をむすぶ七月

いろどりは多彩なるべし夏の花 におい妖しくひらく八月

色褪めてこその黄と赤もみじ葉の散るものこるも絵となる九月

濡れのこる枯れ葉おちばに足取られふとも溜息落とす十月

冬枯れの木々の切実 老いてなお手と手をつなぎ合う十一月

眠りとはいのりの一部ながき夜を夢にしずめて 聖十二月

  *

或る国のこよみ(青空文庫):https://www.aozora.gr.jp/cards/001346/files/49137_33187.html