なななぬかかな

北村周一

十二月骨より白き肌すけて絵とはおおいなる省略であろう

一月のしろいマスクの声のなか、血のいろあかき尿の報告

二月尽霙交じりの雨降る日荼毘に付したり名はラクという

三月はとおい眼差しはじめての個展にがくも眩しくもあり

四月馬鹿テレビの箱にへらへらと降り来たれる元号あわし

五月闇死んだ振りして眠りおれば子らは戦きイヌ駆け回る

六月忌 もふくのすそに足取られすべり落ちゆく階段は闇

七月のキリコ大祭の夜にして杳いきおくにわれをうしなう

八月や能登に口能登あることも法師つくつく奥能登へ来よ

九月淡き夢覚めやらぬ父といて急を知らせるデジタルの音

十月をいよよ見頃のさくら花いっそ月まで犬連れのみちを

十一月晴れてようようはらからが印押すまでの七七日かな

*なななぬか 七七日 四十九日のこと