鼻水たらしながら

仲宗根浩

旧正月寒かった。旧正月前は部屋の中では半袖でも過ごせるくらい暑くなり、それで寒くなり、そのあとまた暑くなり、風邪をひく。プロレスラーが怪我しても試合をしながら怪我と付き合いつつ治すがごとく、薬を飲み、仕事に行き、夜にはいつも通りに酒を呑み、という生活をしてもプロレスラー並みの体力があるわけなく、全然よくならずに咲き始めた近所の桜に気づき、少し見ていると鼻水が垂れてきた。治らないのはとりあえず加齢のせいにしよう。

去年、うちの奥さんの軽自動車がぶつけられたのを機会に、修理から戻ってすぐにずっと壊れたままでラジオしか聴けなかったカセットカーステレオを今どきのCD、MP3再生、USB、AUX入力端子付、iPod、iPhoneからの操作も可能でお値段も一万円以下のものに交換。メーカーはケンウッド、昔で言うトリオ。中学生の頃、アマチュア無線をやっている奴はみんなトリオの無線機だったな。それなのでトリオのステレオコンポはチューナーのバリコンは他のメーカーに比べて大きさが全然違った、というアナログな昔話。で、交換したはいいがボタンの機能が多すぎて設定が面倒。普通のCD再生やMP3再生はなんとなくできるが、大きな液晶画面設定などないのでラジオのFM、AM切り替えがどのボタンを押せばいいのか迷う。数年前であればあれこれいじり倒して覚えたけど、最近それも面倒になってきた。加齢のせいにしよう。すると今度は私の車のカーナビ、タッチパネルの一部が反応しなくなった。中古車なので、ナビの情報は十年前のもの。その頃には無い新しい道を走ると進行方向を示す矢印が変な動きをして面白かったけど、これはこれでナビ以外はCD再生、ラジオも問題ないのでそのままにしておく。もう二年以上ひとりで車に乗っているときに聴くのは「Bestof Muddy Waters」だけだし、今は車に金かける余裕ない。余裕ないのは無駄な買い物をするから。去年は、要らなくなったクレジットカードをギターのピックにしてくれる「PICKMASTER」という本当に無駄なものを買ってしまった。期待に胸膨らませ、開封し一分後に使い物にならないことをさとり泣いた。出てすぐだったので値段も今より高かった。これだったら普通にギターのピックを買ったほうがいい。ネット上で簡単にクリックしてはいけない、ということをちゃんと学習していない。

今年、こっちは復帰四十年。ドルを使い、左ハンドルの車が走っていた記憶を持つ若いのもかなりのおっさん、おばさんになっている。そんな感慨とは関係なく家の中ではついにK-Popの波がきた。奥さんは少女時代のCDをレンタルし歌い、スマホでYoutubeにアップされた動画を見て振り付けをチェックしている。で、音をちゃんと聴いてみると完成度が高い。今のシングルCDはほとんどカラオケ・ヴァージョンが入っているのでインスト聴けばよくわかる。昔、CD屋で働いていた頃扱っていた韓国のポップミュージックとは全然違う。制作するツールが標準化されたからかなあ。これも、巷に転がっているグローバル化というもので括られてね。

今年になって、去年以上に、これさえ入れときゃみたいな感じで使われ、読むたび、目にするたび、耳に入るたび、絆というやつには、うっ、やめよう。それよりはやく鼻水止めよ。