石やんの9月

若松恵子

誕生日と、命日のある7月が、ほんとうは石やんの月なのだけれど、トリビュートライブが2つも企画されている今年の9月は、石やんの9月だ。

ロックギタリストでありシンガーソングライターの石田長生(いしだおさむ)が急逝して4年、彼のカバーアルバム「SONGS OF Ishiyan」が盟友CharのEDOYAレコードから7月25日に発売された。参加しているのは上田正樹、大塚まさじ、金子マリ、有山じゅんじ、Char、仲井戸麗市、山崎まさよし、大西ユカリ、甲本ヒロト、押尾コータローなど石やんゆかりの多彩な人々だ。

石やんの地元である大阪のFM COCOLOでは、アルバム発売を記念してCharがDJを務める特別番組が4週にわたって放送された。カバーアルバムに参加した大塚まさじや仲井戸麗市をゲストに迎え、ミュージシャン石田長生の魅力を語る、心のこもった番組だった。ギタリストとして一目置き、BAHO(東の馬鹿と西の阿保をあわせて馬保=BAHOというユニット名だ)の相棒として近くで石やんを見てきたCharならではの視点で語られる石田長生の魅力が新鮮で心に残った。フェスなどで出演者が最後にみんなで演奏するような時に、石やんは、君はここで歌って、君はコーラスしてとその場でアレンジして、みんなをまとめていたという。普段はふざけているミュージシャン仲間も石やんのアレンジには一目置いて従っていたという。また、楽譜を書くことができたので、「あの時のあの曲」と言うと、ギターケースにしまってある楽譜の束の中から見つけ出してきてくれたということだった。ギターケースの中の楽譜の!!。ギターを抱えて世界を回っていた姿が思い浮かぶエピソードだ。大ヒットを飛ばすことはなかったけれど、いっしょに演奏したたくさんのミュージシャンの心に残るミュージシャンだったのだなと思う。「SONGS OF Ishiyan」の最後には、ライブでの定番曲「HAPPINESS」がBAHOのライブバージョンで収録されている。客席とのコール&レスポンスは、石やんの実力全開という感じで聞いていて心躍る。アルバムの最後にこの曲が選ばれているというところにも、プロデューサー小山康一の石やんへの理解の深さと愛を感じる。

トリビュートライブは、大阪では9月14日(土)なにわブルースフェスの1日目で、東京は9月22日(日)恵比寿ザ・ガーデンホールで行われる予定だ。石やんがいなくなって4年、少し落ち着いた心で、どんな歌が歌われるのか、楽しみだ。