ブドヨ・クタワン

冨岡三智

『ブドヨ・クタワン』はジャワのスラカルタ王家に伝わる舞踊で、王の即位式と毎年の即位記念日に上演されてきた。マタラムの王が王家を守護する南海の女神と結婚するという神話を描いているとされる。現当主パク・ブウォノXIII世は、今年の4月12日に14回目の即位記念日を迎えたのだが、舞踊だけで1時間半、入退場も含めると2時間近くかかるこの舞踊が、今年は15分、入退場を入れても約30分しか上演されなかった。私はジャワに住む知人からこのことを知らされ、新聞で確認してみた。『ブドヨ・クタワン』は3部構成なのだが、今回上演されたのは第3部のみ。XIII世の健康状態が思わしくないため短縮した、あくまでもそれは今年だけの措置であると王宮関係者がインタビューに応えている。しかし、昨年も15分しか上演されなかった、XIII世即位後にはイレギュラーなケースが続いていると報じた新聞もある。舞踊継承を担当してきたムルティア王女と王家の軋轢も報道されている。今年の踊り手の写真を見ると、アクセサリが王家所有のものではなく、一般的なデザインになっている。踊り手を王宮外(芸大や芸術高校)から集めたと報じたものもあり、通常の踊り手や衣装が使えない状況にあったことが分かる。私も通算5年の留学期間を通じて舞踊の練習に参加させてもらい、また様々な儀式を参与観察させてもらった王宮だけに、この状況は悲しい。