グロッソラリー―ない ので ある―(34)

明智尚希

不覚にも次郎衛門は寝小便をした。二歳か三歳の時以来だ。それから二十余年、もはや粗相をしでかす歳ではない。人に知られたら大変である。次郎衛門は汚れた敷布団を、人気のない日の当たる縁側にそっと延べた。だが見ていた。三治郎が見ていた。この少年が長じて全国地図を作る人物になろうとは、誰が予想できたろう。まあ嘘ではあるが。

(。-д-。) 嘘ダッタノカ……

 長く生きてきたが、無益とまでは言わないまでも、自他に対して有益な人生を送ってきたとは思えん。毎年毎年限りなく無益に近づいていってるんじゃないかと思う。誕生日は忌々しいね。不要だった一年がまた追加されたという、了解しがたい事実の通告じゃから。こういう無駄な人間が、全国津々浦々で同じことをぼやいておるんじゃろうな。

(# ̄З ̄) ブツブツ

 物心のついた人が、巷間にある物を純粋に楽しむのは難しくなってきている。どこの製品か、その企業はどうなのか、製造国はどこか、この国との関係はどうなのか、誰が何の目的で作ったのか。かつては大人の王国だった。が、現在は逆である。政財官の人々や有権者でもない若年層が、厳しい慧眼を世に突き刺し、本質を射抜き、冷めている。

シーン ( ( ̄ (  ̄(  ̄( ̄  ̄( ̄  ̄))

 まず秒針がある置時計を用意する。次に畳の八畳間へ入る。東に正対するするように正座をする。時計を両膝間の線の延長線上に置く。十センチが適切である。一度大きく深呼吸をし、秒針が十二のところに来たら息を止める。十五秒、三十秒と経つ。四十五秒が過ぎる。一分が経過したら呼吸を再開する。大きな幸せを勝ち得た気分になれる。

(○ ̄ 〜  ̄○;)ソウデスカ……

 海外に到着した時に、いきなり開放的になる人が少なくない。母国はそんなに息詰まる場所なのか。多少の興奮があるのは理解できるが、激しく買い物をしたり容易にはめを外したりするのは謎である。感性に左右される人は自我が整っておらず、誰かのフォローが不可欠となる。同伴者は解放されない程度に、相棒に嫌がられるのが宿命である。

U\(●~▽~●)Уイェーイ!

 寝苦しいほどアイミスユー。歯磨き粉味のアブサンをあおりながら、近代建築五原則を唱えよ。虹こそは人間の努力を映す鏡で、人生は彩られた映像としてだけつかめる。だから全て無常なものは、ただ映像に過ぎない。内在律のラポールが提灯記事を書いた。総カラオケ現象という垂直の大騒ぎに呆れる、見切り問屋は蒼ざめた馬に乗る騎手だ。

(/≧◇≦\) アチャー!!

 アポリネール、アラゴン、アルプ、エリュアール、エルンスト、グロス、クロッティ、シャド、シュヴィッタース、スーポー、ツァラ、デュシャン、トイバー、ハウスマン、バーゲルト、バーダー、ハートフィールド、バル、ヒュルゼンベック、ファイニンガー、プライス、フラエンケル、ブルトン、ヘッヒ、ヘルツフェルデ、ペレ、メーニング……。

゚(゚´Д`゚)゚

 「それではここでお知らせです。今月十四日から全国ロードショーされる『シャーロックホームズと謎の財宝』ですが、犯人はレイノルズ夫妻です。最初のカットから犯人が登場するという非常に珍しいケースです。真ん中くらいに出てくる日雇い労働者のサンチェスは怪しいですが善良な市民です。みなさん是非劇場に足をお運び下さい!」

アホ (* Ŏ∀Ŏ) デス

 不思議な女の子がいた。どこのライブ会場でも必ず右隣りの席にいた。見た感じせいぜい小学校の高学年といったところだ。ライブが始まりみんな一斉に手拍子を送る中、その子だけは突っ立ったまま。加えて、小柄であるため前が見えるはずもないのに、背伸び一つしようとしない。ライブ後、会場が明るくなると、隣りには誰もいなかった。

†┏┛墓┗┓†~~~~~ (m´□`)m 幽霊

 鬱でも躁でもないニュートラルな状態を獲得するのはたやすいことではない。「職場鬱」や「軽症鬱」に代表されるように、心的平和を保てない人は少なからずいる。出窓でまどろむ猫がやすやすと獲得しているものを、人間様は七転八倒して考え、悪戦苦闘してなおも考えて、疲労困憊した挙げ句ようやく手に入れられる。が、長くは続かない。

o(^・x・^)o ミャァ♪

 あくまでも理解は可能という前提に立っての話じゃが、わしからすると、主意主義的な要素がみんなに欠けているように見える。意志なきところに理解なし。まあ今思いついたことを言ってみただけじゃが、理解に限らず意志がないと他人には何も伝わらないもんじゃ。ほれ、パスカルだか誰だかが言ってたろ、人間は考える石である、とな。

アシ(○ ̄ 〜  ̄○;)ナンダガ……

 「それじゃあ、国語の授業に入る前に、先生からとても重要な一言。いいか、よく聞いてろよ。試験に出すぞ。都市計画において一つの地域全体を機能、用途、法的規制などにより小部分に分けることであって、都市計画法に基づいて、機能、用途、高度、高度利用、特定、防火、風致の各地域として定め、建築物に制限を設ける云々、しかじか」

ヘ(..、ヘ)☆\(゚ロ゚ ) ナンヤソレ

 問一:国語の問題を答えなさい。

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ヘ(..、ヘ)☆\(゚ロ゚ ) ワカルカイナ

 粗野で愚鈍な人は、なぜそうであるようにしていられるのか。人を不愉快にし時には怒らせる。誰かがその性質を露骨に糾弾しても自覚する様子はなく、そもそもその能力も具わっていない。どうすればいいのか。これは医学の範疇だろうから、いつか特効薬が出るかもしれない。そうかといって、重大な何かが解決されるというものでもない。

… (´・ω・)_θお薬です

 あのー、あれじゃ。あれ。なんつったっけなあ。こう、紙とか板とかの上に、こう、あるやつじゃよ。わからんか。大きくはない。それどころかぽちっとしてて小さいもんじゃ。紙や板じゃなくてもいい。平面じゃなくてもいいんじゃ。とにかく何かの上っちゅうか表面っちゅうか、全然目立たない感じで小さく存在しておるものなんじゃ――点。

* ゚ー゚) φ.

 鬱病はただひたすらに落ちていく。どんどん落ちていき、いったい自分が何者なのか、何の病気なのかが不明瞭になる。搏動一つが感じられ、一鼓動ごとに病に養分が与えられる。無関係な想念を黒々と巻き込みながら、底なしに落ちていく。上からは鉄柱に押され下からは極太の綱に引き込まれる。人間の形を失ったとしても不思議ではない。

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