深夜カレー

璃葉

奇妙な縁により、ここ最近、人が集まる空間と独りの空間を行ったり来たりする日々が続いている。

昼前に家を出て、ふたたび戻るのは日付が変わる前。

動きまわって疲れ果てると、やがて自分の内側にある芯がむき出しになって、からからに干上がった土みたいになる。そんなときは無性にカレーを食べたくなる。スパイスのたくさん入ったカレーを今すぐ。

午前0時半。友人からもらった佐渡の米(これがたまらなく美味しい)を鍋で炊きながら、冷蔵庫にある野菜を片っ端から切り刻む。にんにく、しょうが、セロリ、玉ねぎ、トマト。スパイスはクローブ、コリアンダー、クミン、カルダモン、チリパウダー、ターメリック。厚手の鍋にそれらとひき肉を放り込んで炒め、これまた冷蔵庫に眠っていた安い白ワイン(生のローズマリーを2、3本ほど詰めてある。これは知人から教えてもらったのだけれど、安酒が薬草酒みたいになる)をどばどば入れて、ひたすら煮込む。

セロリの甘さと香辛料の混ざった絶妙な香りが、せまい部屋に充満していく。チリパウダーを入れすぎたかもしれない。

時計を見やると午前1時半。一体私は何をやっているのだろうかと我にかえる。でも、たまにつくる深夜のカレーは驚くほど自分を救ってくれる。疲れたときは煮込み料理とするといいと教えてくれたのは誰だっただろうか。

できあがった激辛カレーを、ひいひい言いながら湿気のこもった部屋で黙々と食べる。いけないと思いつつも、氷水を勢いよく飲んでしまう。

午前2時、薬のようなスパイスによって身体はほぐされ、養分を与えられた土のようにじんわり柔らかく、やっと元の自分に戻ってゆく。