150 無季

藤井貞和

流れついた海岸の句集、
どこで生まれたの?
あかちゃん俳句。
投げ出された海岸で、
ほんだわらを食べ、
はすのはかしぱんに会い、
ふなむしのゲーム。
あかちゃんの句集が、
だんだん メッセージ詩の、
様相を呈し、
子規と虚子とのあいだで、
ふたつのはしら、
かべになる かなしいね。
墓のうえにぼおっと立ちゃす、
「おわぁあ」と鳴きゃす、
もう、いの、
海へ帰りたい。
のちのほとけに、
はな まいらせて、
句集をのこして、
さよなら、
ぼくらを二度殺したのはだれ?

(「瓦礫の石抛る瓦礫に当たるのみ」〈高柳克弘〉。無季の句であるために、それを逸脱だとするある俳句の団体から排除されたそうです。この水牛の詩「無季」とは無関係です。高柳さんの句には「災害の地にて」とあるそうです。)