156立詩(4)刈萱

藤井貞和

少女を過ぎてゆく           風
歳月は、               過ぐる
抱いてもくれぬおとこを        かやが
見送っていた。            下根
おとこを思い乱れて、          の
かやのした根に、           つゆ
寝みだれる少女はさわる。       ばかり
少女のさわるのは、          ほどなき
くろずむ露をしたたせる暗渠か     世を
〈とそこまで訳して、老後の私が、    や
少女の日をなつかしむ。〉        思ひ乱れむ

(定家の百歌より。)