147 ひとりして

藤井貞和

「美化されて
長き喪の列に訣別の
歌ひとりしてきかねばならぬ」(岸上大作)

すべての美化は
はじき返されるしかないと
佐藤泰志はうたう
二十一歳

少女の愛にも斃れることのできる
優しい魂だけが
ほんとうに「革命」を行い得るのだと

樺美智子を
生きのこったにんげんの
身勝手な美化に置いてはならないと
いうけれど

祈る姿を人に見せない
心遣いをたいせつに秘めて
歌人は逝ったと

「巧妙に
仕組まれる場面おもわせて
一つの死のため首たれている」(同)

 

 
(思い立って「この世界の片隅に」〈アニメ映画〉を観に行き、帰って『帝国の慰安婦』無罪判決のニュースに接しました。二十一歳の佐藤が「私の読書ノート」を書いたのは一九七一年五月のことで、岸上全集に向けての感想です。詩で少女像にふれることはむずかしいですが、いつかふれたいと思います。)