けいようしい──翠の虱(25)

藤井貞和

「美しい、正しい解」という作品を去年書いたとき、

じぶんのなかでこわれたいくつかの、文法的問題点。

そのなかに、「けいようし」がありました。「けいようしい」

と言ってしまうんです。けいようしくない、けいようしかろう。

活用してしまうんです。うつくしく、ただしく、あおく、きよく、

声もなく、……

(英語やフランス語、その他でもおなじことがいえる。メランコリイ、メランコリック、アイロニイ、アイロニック、メロディ、メロディックなど、名詞/形容詞の対立はそのまま、日本語の連体形/連用形に対応する。なぜだろう。偶然の一致と思ってしまうひとはたぶん、どうかしている。うつくしっく、声もなっく、といっちまうんです。)