うつくしかる(けいようしい、その2)──翠の虱(27)

藤井貞和

反・河を流し、反・池へそそぐ、
われら、反・樹のかげに。

へどろのうえに、きよらを掬い、
このきよらもて生かす、反・泉のよごれ。

にごり、またにごり、くさる葉を浮かべ、
そうしてまでも、

みずは上澄みを、
たくみに地上にもたらす。うつくしかる……

われらを生かしめる、うつくしかる上澄みを、
これ以上、よごさないで!

(「美しい、正しい解」という作品を去年書きながら、うつくしく、うつくしかるべき、うつくしからず、……文法的に言うと、カリ活用というやつですが、欧米語にもそのままあるんです。クラシック、クラシカル、クリティック、クリティカル、シニック、シニカル、……、-k, -kalの対立は、日本語でk音をのみのこしたというに過ぎないにして も、なぜだろう。偶然の一致と思ってしまうひとはたぶん、どうかしている。うつくしく、うつくしかる、と言っちまうんです。)