八本の針(翠の虱32)

藤井貞和

刺繍による、布地のうえの曼珠沙華、ヒナゲシ。

縫いとる絨毯を引き辟(さ)くこと。 ぼくのシーツ。

あめ牛、馬が糞をする、そのうえに小便をするぼくの、

美しい絨毯。 現実の像だ、図形によって色相を奏でる、

浮紋だけが真偽を超えるから。 菅(すげ)よ、

ここにあなたを引き辟(さ)くための八本の針がある。

……一本は龍樹の鉢のなかに落とされた針である。

童話のなかにあった、寝転がって見ていたら。

「ぽとりと落とされた針の極微(ごくみ)を」と、そこにはあった。

中間子の白雪姫がひろった。 湯川(=秀樹)が

宇宙の箱を差し出して、輪に描く。 切り辟(さ)き魔よ、

天の運針によって、大きな大きな輪をえがいて! 

「えがく」という語をどうか、文字通りに受け取ってほしい。 

これにかぎらず、どうか。(4月1日)

(「電話口で、詩を読むように話してくれた。/神様、神様、/誰が、私たちの望みをかなえてくれるの?/たくさんの贈り物で、この日を幸せにして。/私が、学級で勉強するのを助けてくれるとうれしいなあ。/科学の力で私の頭を賢くして、心をきれいにして。/私とこの国をすべての悪いことから救ってください。」〈[水牛のように]5月1日「太陽の布団」佐藤真紀〉より。私こと、〈戦争のない国〉研究に今月から取り組んでいる近況です。)