乳(ち)の包むごとき凜として文字新し――翠の石筍58

藤井貞和

ち ちからいっぱい、
の のばす毛糸、
つ つきとおす針、
つ つみあげた布地、
む 胸にバリケード?
ご ごらんのとおりいまや、
と 解けないハリケート(針、毛糸)、
き 霧吹きで吹く、
りん りんねるや、
と 解きほぐす袷。
し しつけたそでに、 
て 手をとおし、
も もつれる刺繍に、
じ じゅばんの、
あ 洗い張り。
た タトゥーの素肌に、
ら ラメのしたぎ、
し しぼりのパジャマ

(吉本隆明さんが「和歌」という語を言わないので〈前月参照〉、『新古今和歌集』をどう言うのかしらと心配したら、ちゃんと「新古今集」と言ってました。)