翠素96――のたうつ白馬(=はくば)!

藤井貞和

爆発! うたの発生か!
嘘か! ばれにばれ、
水素よ、冷却の音!
露白く、炉心か、
ウオオ! 反原子、
火力よりか、震源は!
覆う管(=かん〈被覆管〉)、白く露出、
遠のく焼き入れ、
装(=よそ)いすれば、
似れば仮装か、異説は、
のたうつ白馬!
                  〔回文詩〕

(なぜ水素が発生するか。燃料被覆管〈ジルカロイ〉が、高温高気圧で灼熱の水蒸気と接すると、活発に水素を噴き出し、もし酸素がなければ爆発する。炉心が冷却剤〈=水〉の水位の低下で露出すると、高温下で水素ガスが放出される、と。しかし、なぜ、それが建屋に漏出するのかを含め、事故調の報告書も、原子力関係者の著書も、みないちように肝腎のところを押し黙る何かがあって、どうしてもわからない。菅直人は直後から「水素爆発の危険はないか」、(斑目)「ありえません」という会話を交わしていたらしい。理系の菅には推測しえていたことになる。事実、一号機も二号機も三号機も、そして…… 水素爆発を起こした。おいらは最初、ニュースを聞いて水蒸気爆発かと思ったよ。水素爆発なんだって。それはつまり、原子炉の設計じたいに含まれていた過酷なリスクじゃないか。ウオオ)