徒然なるままに30年

大野晋

大学を卒業して就職したのでもう30年以上社会人をしている。最初の数年はどうして大学に戻るのかを真剣に悩みながら過ごしていた。大学で植物相手の研究をして、本を出すことが夢で、もう少しで近くに行けると思っていたので、そこに戻りたいと願っていた。若いから給料は少なかったけれど、仕事はたくさんあった。そして、そのうちに仕事が忙しくてそこまで手が回らなくなった。それでも、10年くらいは山も登ったし、大学に集まったりもした。

10年経つか経たないかといった頃、仕事の内容が変わった。やがて、全国を飛び回ることが多くなり、忙しく歩くことが仕事になった。同じ頃、登山ブームが来て高齢者が山にたくさん押しかけて来た。狭い登山道を塞ぐように歩く人たちに遭遇して、危険を感じてブームとは逆に山登りをしなくなった。

20年ちょっと経った頃、仕事が何回か変化して、最後は長年勤めた会社を辞めた。新しい仕事は不思議だった。今までの常識を覆された気がした。はっきり言って、打つ手がないと諦めの気持ちになったこともあった。まあ、それでも手を替え品を替えてなんとかやってきた。

さて、就職して30数年ほど経とうとしている。この数年は長時間通勤でいろいろなことを諦めてきた。60歳近くなって体も動きにくくなってきた。ここで、やっておかないともうチャンスはないという気が強くなって、一旦仕事を辞めることにした。

あと1ヶ月。
まだ、次の仕事は決めていない。
まあ、ケ・セラ・セラ。なんとかなるさ!