製本かい摘みましては(126)

四釜裕子

「ハラペコ カーニバル!!」を合い言葉に幕が開く「せいほんげきじょう」という話をまとめた小さな冊子があります。葉書サイズで、柄入りでろう引きしたようなオレンジ色の紙がカバーです。観音に開くようになっていて、さしずめこれが最初の幕でしょう。開くと、ワニ君とニンジン君とカブ君が白い緞帳の前でお出迎えです。幕の下部はエプロンのフリル、あるいは菓子の下にひくレース模様の白い紙のよう。よく見ると、本という字や本を開いたシルエットが切り抜かれています。

ハラペコ カーニバル!! 掛け声とともに緞帳があがります(白い紙を上にめくる)。すると中綴じ冊子の真ん中のページがあらわれて、ワニ君は左側のページに立ち、左に向かって闊歩し始めます。追いかけていくと……、本の神様のもとに生まれた本の妖精が、製本職人のところへ魂を背負って旅立つというお話のはじまりです。

製本ワークショップの始まりにおこなう、「製本とは?」というような簡単な質問に答えながら、それを本文として、小さな冊子に仕上げるという課題に対する作品のひとつです。職人が、長い旅をしてきた妖精のつかれをいやすために「おやつもわすれません」というセリフも良かった。自分の中にあるものが、手の中からこんなふうに本のかたちとなって現われてくる経験は、きっと楽しいものだと思っています。