・・・数・・・
ドナトーニが1980年に発刊した2冊目の著書「Antecedente X (経緯X)」のなかに「Numeri(数)」という章がある。
生活のためまず会計士の資格をとった経歴と関係あるのか分からないが、ドナトーニの数への偏愛はとても強く、彼と音楽の距離を理解する上 で意味深いので、少し抜書きしてみよう。
音符はこんな按配で組みかえられてゆく。後期の作曲姿勢が、彼にとって遊びの意識が強かった理由がすこしわかるとおもう。
たとえば彼の速度表示が妙な数字だったりするのも、みなこうした数字遊びからきている。
26
-1
27
0
28
1
29
2
30
3
31
4
32
5
33
6
34
7
35
8
36
9
37
10
38
11
39
12
40
13
41
14
42
15
43
16
44
17
45
18
46
19
47
20
48
21
49
22
50
23
51
24
52
25
53
26
54
27
55
28
56
29
57
30
58
31
59
32
60
33
61
34
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35
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36
64
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66
39
67
40
68
41
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42
70
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51
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80
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55
83
56
84
57
85
58
86
59
87
60
88
61
89
62
90
63
91
64
92
65
93
66
94
67
95
68
96
69
97
70
98
71
99
72
00
73
01
74
02
75
03
76
04
77
05
78
ドナトーニは「著者に身近な数列」としか説明していないが、実際は左の数列は年号、右の数列はそれに比例する彼の年齢なのは、すぐわかる だろう。
この数列は良く使う一つのモデルに過ぎないと断ったうえで、説明をつづける。
「ここには2つの数列が並んでいることが大切である。そして文字は入れ換えることができる。12は21と入れ換えることができる…」。
そして左と右の数列でシンメトリーになる組合わせを先の数列から抜書きすると次の7組み合わせになる。
30
(0)3
41
14
52
25
63
36
74
47
85
58
96
69
この7列の組み合わせのうち、真ん中4段目の63と36を足すと99。
一番上から数字を構成する数の和をみると3+0=3、4+1=5、5+2=7、6+3=9、7+4=11、8+5=13、9+6=15と なり、3+5+7+9+11+13+15=63、真ん中の4段目に等しい63となる。
左の数列の和は30+41+52+63+74+85+96=441で、2段目の数字41-14にとても似ていることに気がつく。
右の数列の和は、03+14+25+36+47+58+69=252で、3段目の数字52-25にとても似ている。
これらを合わせた総和は441+252=693になり、1段目30-03と7段目96-69の関係に近いことがわかる。
上3段の左の数列の和は30+41+52=123で、右の数列の和は03+14+25=42。
下3段の左の数列の和は74+85+96=255となり3段目52-25に対応し、右の数列の和は47+58+69=174となり、5段 目74-47に対応する。
上3段の数字の和は、左列右列に関わらず、(3+0)+(4+1)+(5+2)=15になり、7段目9+6=15もしくは6+9=15に 等しく、下3段の数字の和は、左列右列に関わらず(7+4)+(8+5)+(9+6)=39になり、左列、右列に関わらず1段目と7段目 の端の数字3(0)-9(6)に対応する。
これら2つの総和は15+39=54となるのだが、ちょうどドナトーニが生年(19)27年-0(歳)から数えて一回りした (19)54(年)-27(歳)の54に対応する。つまり
27
0
54
27
の関係を引き出すことが出来る。ドナトーニは次のように書く。
「数の内的イメージに関していえばその数字と文字はただ形にすぎない。因習的な形象、印刷の脱け殻にすぎない。数的内面性は、命をもち反 応し変容する実在が棲みついている。それは自分の空想物や想像物ではない」。
上に抜書きした7段の数列は、最初のオリジナルの数列から11周期を6回繰り返した抜書きなので、結局そこで使われる数字は 11(個)X6(回)=66個となり、オリジナルの数列から引き出したシンメトリーの組み合わせ
33
06
60
33
を互いに斜めに足した和(33+33=66もしくは60+06=66)に対応する。
実は上段、下段ともに引いた差27(33-6=27もしくは60-33=27)は先のドナトーニの生年(19)27年にも対応するのだ が、
ドナトーニ自身は、ここでは違ったアプローチを試み、上段下段に関わらず、33を3³=27と読み替えて27+06=33となることを示 し、同時に(0)6もしくは6(0)という数字は3+3に対応していることを指摘する。
また
36の組み合わせの場合、先述の(441+252=)693が、9を中に挟んだ形で右の数列に表れる。同じようにして左の数列を作れば396 になり、当然シンメトリーを形作る。
(0)9
90
63
言うまでもないが、互いの対角線上の数の和99は、先述の66という数字の対称形になっている。
ところで、この組合せの左列の和は36+90=126、右列の和は9+63=72を並べて書いてみる。
126 72これらを左右対称にして読めば
(-)1 26 72 (0)となり、それはつまり
→ ←
-1 26と書き直すことが出来て、同じように
0 27
26という最初に挙げたオリジナルの数列の書き出しに対応し、
-1
27
0
36の例でも挙げたように、この数列で繰返される9の内在を
(0)9
2+6=8 8=9-1という形でほのめかしているが、
2+7=9 9=9-0
36という二つの組み合わせは54周期で対応している。
(0)9
90
63
この9を内包する組み合わせについて、ドナトーニは続いて
54という二つの組み合わせについて言及する。
27
72
45
言うまでもなくこれら互いを交差した和は54+45=99、72+27=99となるが、これはちょうど先述の
27に対応することはいうまでもないが、これが27周期で対応しているのに対し、先の54-27と72-45の組み合せは18周期に収縮され る。
0
54
27
同じように交差の和が99になる組み合わせでは
45もあるが、この組み合せの周期は18の2倍にあたる36周期となる。
18
81
54
一見この組み合せには特に目新しい内容はなさそうだが、上段の和は45+18=63と36の対称形になっているだけでなく、
下段の和である81+54=135を13(X)5と読み替え、さらに13⁵と想像を膨らませれば、13X5=65が13⁵=371293 と飛躍する。
これを3712....93と分け、それぞれの数字の和を求めれば、3+7+1+2=13
9+3=12となり、その総和は13+12=25つまり当初の乗数5をあわらす。
この組み合せでも、左列の和は45+81=126で、右列の和は18+54=72となり、先述の126と72の組み合せと等しい。
だしぬけに思いがけない乗数が表れたが、驚かないようにと断った上で、ドナトーには27周期で対応するシンメトリーの組合せを続ける。
44このほか、
17
71
44
36も同じく63を中心として27周期で隔たっている。
(0)9
63
36
90
63
先に述べた象徴的な総和693という数字を解いてゆけば、69,96,93,39という数字が表れるが、そこには(23X3), (32X3),(31X3),(13X3)という思いがけない数字が裏に隠れている。
55という数字を、5(+)5と読むか、5(X)5と読むか、5⁵と読むか。そこから5(X)5=25を引き出して、2⁵と読み替えて、 2⁵=32という別の姿へと溶かし込むか。
さもなければ、5⁵=3125を引き出し、31 25を別の方向から読んでみたらどうなるかと話は延々と展開していく。
ドナトーニの誕生日は6月9日。臨終を迎えたのは8月17日。
ドナトーニは正確には73歳と2ヶ月8日で亡くなったが、上述の彼の数列表によれば、27年-00歳のシンメトリーは00年-72歳とな ることにお気づきだろうか。