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詩 新しい歌
星をたよりに
最後のノート
だるまさん千字文
戦さのはげしかったころ
秋の雨
アン・バヤン・コ(わが祖国)
うばわれし野に春はくるか
真田隊軍歌
パレスチナの恋人
今日は会えない
花のうた
祖母のうた
フジムラストア
涙ぬれし豆満江
めしは天
ボクハソンケイスル
都市
名前よ立って歩け
パレスチナの子どもの神さまへのてがみ
水牛楽団のうた
編集後記
新しい歌 詩 ロルカ
訳 長谷川四郎
曲 林 光
あすともなれば一つの歌が
未来の静かな水面をゆさぶり
そのさざ波とぬかるみを
希望でふくらますだろう
光り輝いておちついて
思想に満ちた一つの歌
悲しみや苦しみやまぼろしに
まだよごれていない一つの歌
もろもろの物 もろもろの風
その中心にせまる歌だ
とこしえの心の喜びに
最後にはやすらう歌だ
詩・曲 ジツト・プミサク
星のひかりはるかに
空にかがやく
こころのともしび
みちびきのはたよ
あらしがくると
月も雲にかくれ
希望の星ひとつ
こころをはげます
くるしさにまけず
人民はたちあがる
月もおち 空くらく
かがやく星ひとつ
夜明けまでひかる
詩 中尾幸吉
曲 高橋悠治
アメガフッテル アメガフッテル
トオオク トオオク ニモ フッテル
チイサイ チイサイ イノチノウエニモ
アメハ ヤッパリ フッテイル
イシモ ヌレテル
ソラモ
ユビノサキモ ヌレテイル
ドウショウモナク イタシカタナク
ヌレテユク
イマ
カナシイトモ オモワナイ
タダ
ミョウナ 深ミ
エジプトノ ピラミッドノ
アノ中ノ石棺ノ
ワビシサガ
ナントモ ジプンノ モノノヨウダ
あめ あめ あめ あめ
あめふうり
あめふうり
喫茶店
みんな おちてくる人だ
闘ウヤツハ 闘エバイイ
生キルイガイニ能ノナイ奴ハ
ヤッパリ ノコノコシテイル
モウ ダレニモ 会イタクナイ
イキテル奴ハ
ボクト カンケイナイヨ
キミハ
ソッチカラ オレヲナガメ
オレハ
コッチガワカラ
キミタチヲ ミテイル
今日 エイガ ミタ
小林旭ノ
ボクトシテハ
ヒトガ 殺サレ シンデイク
シュンカンノ描写が
オモシロカッタ
エイガデハ
ミンナ タノシソウニ
コウフク ソウニ
シンデイク
ダガ ジッサイハ
殺スノモ 死ヌノモ ムツカシイ
カコクナ イシ[#「イシ」に傍点]ガ イル
詩 矢川澄子
曲 高橋悠治
だるまさんがころんだ
だるまさんがわらった
だるまさんたっちして
だるまさんさああんよ
だるまさんおおつよい
だるまさんのかあさん
だるまさんをだきあげ
だるまさんにほほずり
だるまさんあっぷっぷ
だるまさんほらまけた
だるまさんはすくすく
だるまさんらしくなる
だるまさんのゆめにも
だるまさんがいるかな
だるまさんをみまもる
だるまさんのとうさん
だるまさんはいいねえ
だるまさんのみらいは
だるまさんしだいだぞ
だるまさんなにになる
だるまさんあそばうよ
だるまさんをよぶこえ
どるまさんいっといで
だるまさんをみおくる
だるまさんのおやたち
だるまさんはでてゆく
だるまさんのうちから
だるまさんのなかまが
だるまさんをまってる
だるまさんのせかいへ
だるまさんがころんだ
だるまさんだめだなあ
だるまさんにきびしい
だるまさんのせんばい
だるまさんがんばって
だるまさんをはげます
だるまさんのともだち
だるまさんはやめない
だるまさんはとっしん
だるまさんきをつけて
だるまさんがかったよ
だるまさんよくやった
だるまさんはやっばり
だるまさんだったんだ
だるまさんおめでとう
だるまさんにだつぼう
だるまさんのゆくては
だるまさんにあかるく
だるまさんはかくして
だるまさんとしてたつ
だるまさんにあこがれ
だるまさんをあいして
だるまさんにとついだ
だるまさんのおくさん
だるまさんのつくった
だるまさんのわがやで
だるまさんによくにた
だるまさんのこどもが
だるまさんをみあげる
だるまさんしあわせか
だるまさんがころんだ
だるまさんのこころに
だるまさんのしらない
だるまさんがめざめた
だるまさんのあたまは
だるまさんをせめたて
だるまさんのからだは
だるまさんにあらがう
だるまさんのくるしみ
だるまさんのたたかい
だるまさんしかしらぬ
だるまさんのよろこび
だるまさんしかしらぬ
だろまさんのかなしみ
だるまさんのすべてを
だるまさんはあじわう
だるまさんはあくまで
だるまさんたらんとし
だるまさんなればこそ
だるまさんになりきる
だるまさんおかしいな
だるまさんのくせして
だるまさんやりなおせ
だるまさんはやったよ
だるまさんをせめるな
だるまさんはかつての
だるまさんとはちがう
だるよさんのさとった
だるよさんのげんかい
だるまさんのたそがれ
だるまさんがころんだ
だるまさんそのままで
だるまさんのなにかが
だるまさんにささやく
だるまさんはほほえむ
だるまさんおやすみよ
だるまさんのもとめた
だるまさんのねはんに
だるまさんはいまこそ
ゆっくりとねころんだ
詩・曲 アルフォンソ・ケベコール
せめてくるはげしい戦さをさけて
野をこえ山こえて
ふもとに身をひそむ
印象あたえた空中戦も
人の命をうばう
あの爆弾はきらい
戦後はあわずにはなればなれと
はるかに遠い国
北の海のむこう
年月は流れ 便りもなしに
いかにおすごしかと
あこがれわが胸に
いつまたあえるか夢みていのる
願いはかなえられ
いま楽しくつどう
よろこびあふれる陽ざしのもとに
感激してともに
むかしをよみがえす
いまこそ肩をならべ手をくんで
強く団結して
希望をまもりぬく
足なみそろえて進歩的に
協力してゆこうよ
ゆこうよとこしえに
詩・曲 マリアン・マトゥシキエヴィチ
秋の雨 かなしい歌
銃はぬれ鉄かぶとはさびつく
泥にまみれ 涙にぬれ
背のうの下をぬらした十八歳
遠い町に夜がくる
いとしい娘はねむりにつく
今日もまた夜霧みつめ
君の無事を祈ったことだろう
秋の雨 かぶとぬらす
どこか遠くへ君は消える
いつかまた帰る日に
あの子をだいてねかしつけよう
詩 ホセ・コラソン・デ・ヘスス
コンスタンシオ・デ・ヘヘス
ホセ・リサル
わが祖国フィリピンよ
こがねと花のくに
やさしい人の心 美しくかがやく
だが異国の船がこの平和おかして
祖国を奴隷の苦しみにつなぐ
カゴの鳥も自由もとめてはばたく
とらわれの祖国も解放をもとめる
フィリピンよ
涙と悲しみの国よ
解放の日をまちのぞむ
祖国に生きるこのつらさよ
外国のため奴隷にされて
苦しむ国よたたかいにたて
東に自由の夜明けがく・/P>
詩 李相和
曲 金民基
ふりそそぐ陽をあびて
青空が野のなかにとける果てまで
一筋の畔道を夢のように
あてもなくさまよいあるいたあの日
だけどいまは野をうばわれ
春さえもうばわれてしまった
草いきれにつつまれて
ほほえみまでもあおくそまる
春の精にまどわされ日暮れまで
足ひきずってさまよいあるいたあの日
だけどいまは野をうばわれ
春さえもうばわれてしまった
蝶よつばめよ飛びたつな
けいとう咲く村に立ち寄って
椿油つけた草かり娘
あのこにもひとめ会いたいな
だけどいまは野をうばわれ
春さえもうばわれてしまった
詩 福田善之
曲 林 光
織田信長のうたいけり
人間わずか五十年
夢まぼろしのごとくなり
かどうだかしっちゃあいないけど
やりてえことをやりてえな
てんでかっこよく死にてえな
人間わずか五十年
てんでかっこよく死にてえな
異国の聖のたまいぬ
見よや野の百合 空の鳥
あしたはあしたの風が吹く
かどうだかしっちゃあいないけど
生きてる気分になりてえな
てんでいきがって生きてえね
あしたはあしたの風が吹く
てんでいきがって生きてえな
時は戦国 吹くは風
流れる雲と列組んで
一匹どっこい腕しだい
かどうだかしっちゃあいないけど
やりてえことをやりてえな
てんで調子よく生きてえな
一匹どっこい腕しだい
てんで調子よく生きてえな
詩 マハムード・ダルウィシュ
曲 高橋悠治
きみの瞳はとげ 胸をさす
心にのこるこの痛み
嵐にむかい 夜と痛みにたえて
深くつきささり
傷口から星の光させば
現在は未来にかわる
それはなによりも大切なもの
きみの瞳はおぼえていない
あちらがわでいっしょにくらした日々さえ
きみのことばは歌だった
いまいちど歌いたいのに
冬はばらのくちびるをとざしてしまった
詩 スタニスワフ・マギエルスキ
曲 ブロニスワフ・クルル
今日はこられないよ 夜霧に消える
うしろ姿を追わないでくれ
こよいの宿はどこになろうと
そこでぼくを待つ 森の仲間が
月はもう沈んだ 犬の通ぼえ
君と別れても おもいは残る
いつか帰れたらいつものように
熱いくちづけでむかえておくれ
帰れないときは 仲間が春に
ぼくの灰をまき 骨は苔むす
たずねておくれよ 草原にいつか
麦の穂にかわって生きてるぼくを
詩 佐藤信
曲 林 光
ちいさな草が芽をふいた
それからそっと花つけた
たぶんそいつはとおい朝
それがぼくらの歌だった
ぼくらはいつかそこにいた
ぼくらはいつかみつめてた
春さえくれば芽をふいた
雨さえふれば花つけた
いちばん寒い冬の夜
いちばんひどい雪のとき
声にはせずにうたってた
わすれぬために花のうた
詩 木村迪夫
曲 高橋悠治
ふたりのこどもをくににあげ
のこりしかぞくはなきぐらし
よそのわかしゅうみるにつけ
うづのわかしゅういまごろは
さいのかわらでこいしつみ
*
おもいだしてはしやすんをながめ
なぜかしやすんはものいわぬ
いわぬはづじゃよ
やいじゃもの
*
じゅうさんかしらで
ごにんのこどもおかれ
なきなきくらすは
なつのせみ
*
なんのいんがか
いくさのたたり
みせものうづになりました
*
にほんのひのまる
なだてあかい
かえらぬ
おらがむすこの ちであかい
*
おれのうたなの
うただときくな
なくになかれず
うたでなく
*
おごさま
おごさま
なにくておがる
うらのはたけの
クワくておがる
おがたおこさま
なさけがあらば
たおれたおらえのうづおば
ごてんにしてよ
詩・曲 チップ・ヘイトルリッドとかき氷
いきつけのフジムラストア
とりこわされちゃったね
あとにショッピングセンターたて
次はどことりこわす
古いものはみんなダメ
島中をとりこわす
できるのはミララニタウン
パイナップル畑あと
プレハブ住宅ならんだ
灰色の町よ
古いものはみんなダメ
島中をとりこわす
町中どこもかしこも
ホテルとアパートだけ
子どもはどうすりゃいいのさ
あそび場もないんだよ
古いものはみんなダメ
島中をとりこわす
こわされたフジムラストア
かき永も買えないね
あとにショッピングセンターたて
次はどことりこわす
詩 李時雨
曲 金用浩
豆満江青い水 さおさす船頭さん
すぎた昔に君のせて
去りしあの船 いまいずこやら
いとしの君よ いとしの君よ
いつまた帰る
水も月夜にはすすり泣く
君に去られてため息ばかり
しのんでむせぶ せつない心
いとしの君よ いとしの君よ
いつまた帰る
君去りし河辺にもみじ咲き
涙の川面に夜鳴き鳥
去りし君にひとめ会いたや
いとしの君よ いとしの君よ
いつまた帰る
詩 金芝河
曲 高橋悠治
めしが天です
天がひとりのものでないように
めしはたがいにわかち食うもの
めしが天です
天の星をいっしょに見る
めしはみんながともに食うもの
めしが天です
めしが口にはいるときは
天をからだにむかえるもの
めしが天です
ああ
めしはすべてたがいにわかち食うもの
詩 如月小春
曲 高橋悠治
ボクハ ソンケイスル
アメノヒモ カゼノヒモ
ヂット タチツヅケル
ジドウハンバイキヲ ソンケイスル
キミハ ミタコトガ アルカ
キョダイナ クウハクガ
スギナミクヲ ツツム ヨルニモ
リンリントシテ キツリツスル
ジドウハンバイキノ イシヲ
カケメグル
ニクロムセンノ ヨクボウヲ
ボクハ ソンナ
ジドウハンバイキヲ ソンケイスル
詩 如月小春
曲 高橋悠治
都市
ソレハ ユルギナキ全体
絶体的ナ広ガリヲ持チ 把握ヲ許サズ 息ヅキ 疲レ 蹴オトシ
ソコデハ 全テが 置キ去リニサレテ 関ワリアウコトナシニ ブヨブヨト 共存スルノミ
個ハ 辺境ニアリ
タダ 辺境ニアリ
楽シミハ アマリニ稚ナクテ ザワメキノミガ タユタイ続ケル
コンナ夜ニ 正シイナンテコトガ 何ニナルノサ
詩 中尾幸吉
曲 高橋悠治
私の名前を
小川の緑の草むらにひろげ
青空のような安心
とあそびたわむれたい
にかよった水のながれ
いつもの通り
あくびしながらながれている
この空は
もうだれのものでもなくなった
私のすがたを残したまま
名前が後へあとへ流れてゆく
名前は
さようならと言っている
あそびが冷汗かいている
名前は
いっこうに生れず
しびれをきらした喪服は
めいわくそうに笑おうか
ふりあげてみる山
でっかいその身は空瓶のようにつっ立ち
風がふきぬけているのに身を
まかしているよふあんなふあんな
まいにちまいにち
曲 高橋悠治
かみさま
あなたのひこうきがまいにちやってきます
きのうもぼくたちのテントに
ばくだんをおとしていきました
ぼくははしっていわかげにかくれました
わらってわらってわらいました
かみさま
いつもたべものをさがすごみばこを
どこへもってっちゃったの
はやくかえしてね
おねがい
かみさま
ぼくたちのもちものはぜんぶ
ておしぐるまにおさまります
おとうさんがおしてゆきます
たすけてよかみさま
ねえかみさま
かあちゃんはいつかむかしのうちへかえるといいます
ぼくはじぶんのへやにねて
ともだちとあそべるんだ
ほんとにそんなひがくるかしら
かみさま
おねがい
せんそうやめさせて
かみさま
ぼくたちはまだきぼうをもっています
詩 ウェンデイ・プサート
曲 高橋悠治
おそれからことばはうまれ
涙から歌はそだつ
自由とは何かいえないけれど
それとわかる 歌をきけば
うたいつづけて道をゆく
足はつかれ 雨がふる
だが歌はたがやしゆく
水牛のように
自由うばわれた男たち
悲しみにしずむ女たち
愛のことばが さしだす手が
届かなくとも歌は残る
うたいつづけて道をゆく
足はつかれ 雨がふる
だが歌はたがやしゆく
水牛のように
歌は記憶 歌は問いかけ
かぎりなくそれはひろがる
記憶の意味は君があたえ
問いのこたえは君が出す
うたいつづけて道をゆく
足はつかれ 雨がふる
だが歌はたがやしゆく
水牛のように
編集後記
一年まえの大みそかは、高田馬場の奥ふかいところにある陶文堂の一室でこの編集後記をかいていた。今年はそれより五日ほど早い。いま萩窪の白頭山の二階で 「水牛」忘年会がはじまったところだ。以下、出席者を列挙して本年の活動のめしめくくりとする。
柳生まち子さんはあの蠱惑的なニジンスキー人形の作者である。渡辺広孝さんは「水牛通信」の運搬係。水牛楽団はかれのつくった竹の笛をよく借りる。須郷純 子さん、ニジンスキーの「ポーズ」のスライドを映したひと。鳥養潮さんとは松本で共演した。なんというのかな、音のパフォーマンスをやるひとです。
戸田れい子さんのとった夕張の写真は「水牛通信」で好評だった。竹前文美子さんはスペース桐里のあるじ。国吉保さんは学校を中退したというのに、沖縄にも どらず水牛にいるのだ。
田川律さんは紹介を略す。平野甲賀さんも同様。岡真樹さんはことしの編集委員会のニュ−・フェイス。斉藤陶文堂さん、この後記ができあがるのを待ちなが ら、もう酔っばらっている。荘司和子さんも来た。タイ語。ことしはカラワンの来日で大変だった。
鎌田慧さん、ことしははじめて水牛楽団と旅をして音楽にめざめた。おや、ポーランド「禁じられた歌」コンサート以来の工藤幸雄さんが、袖井林二郎さんをつ れてあらわれた。すでにかなり酔いがまわっているかのごとくである。
如月小春さん登場。劇作家。ことし、いっしょにパフォーマンスをやった。本号にのっている「ボクハソンケイスル」などの作者である。三宅榛名さんは作曲 家。高橋悠治とのピアノ・デュオ『いちめん菜の花』というレコードを出したばかり。石井かほるさん。水牛の母。小室等さん。ほとんど大人、今年はカラワン とのコンサート・ツアーをばっちりつきあってくれた。志沢小夜子さん、なぜか小室等さんとともに現れた。奇蹟的なカラワン全国コンサートを成功させた仲間 である。