Kosugi



芸大楽理科で「グループ・音楽」を作っていた頃

ケースに入っていないギターを持ち歩いていた

振ると 石ころの音がした


初期のタイトルにある mālikaは花環

manodharma は「心の法」 南インド音楽では 音楽の文法の範囲内で

音楽家の創造性が多様な現れをする即興を指す


「フルクサス」の「危険な音楽」に寄せた『革命のための音楽』は 

今から5年後に片目をえぐり出せ と言う 

そのまた5年後には 残ったもう一つの目も


エレクトロニクスによる変調とエコーマシンを通した

ヴァイオリンの揺れ動く即興と 声の低い唸りから

音を操る手を離れて 風や光のゆらぐ南 夏の空間へ


ヘテロダインは聞こえない二つの高周波の干渉から生まれる

差(マイナス)と和(プラス)の波の全体

キャッチ・ウェーブ 音の波乗り

こだまが返り 音が内側から崩れていく


魂がヒマラヤを越えて飛んでいってしまう時がある

「タージ・マハル旅行団」

魂を追って旅に出る でもどこにも見つからない


長い紐を自分の体で巻き取る

マイクを大きな紙で包み 包みがほどけていく音を聞く

袋に入り あちこちの穴から手や足を出す

一枚の紙 一つの行為

一つの文字 アルファベット オノマトペ

碁石 輪ゴム プラスチックの蓋


砂に埋れた発振器が ちいさく時を刻む


車輪に送信機を付けた自転車をのりまわす

釣り竿につけた受信器

吊るされて くるくるまわる

距離が変われば 波も乱れる

扇風機のそよ風でゆれ 声もゆったり波打って


輪になってもどってくる波が

まわる羽根で散らされて

空間がひろがる

息づく空間が退いていく先に

大きな波が巻き返し打ち寄せる瞬間が覗く


インスタレーションの水面下に

危険な音楽が いまも脈打っていて

パフォーマンスのなかで 突然めざめるかのようだ



       芦屋美術館「小杉武久 音楽のピクニック 」展

            (2017129 2018212日)のために