『カラワン楽団の冒険 生きるための歌』 ウィラサク・スントンシー 荘司和子訳

目次    


カラワン 序詞

日本のみなさんへ
 スラチャイ・ジャンティマトン

第一部 回想のカラワン
  ウィラサク・スントンシー

 1 カラワンの誕生

 2 クーデター

 3 「森」の生活

 4 ラオスから中国へ


第二部

 5 モンコン・ウトックの話

 6 楽団はよみがえる
    八巻美恵

 7 カラワン歌集

訳者あとがき

  カラワン 序詩

朝の森に光がさして
あらゆる植物をやさしく暖める
おいで兄弟たち、友だちみんな
ぼくたちの声で目をさましておくれ
カラワン、カラワン……どん底の

機械化の時代、貧民の牛車のキャラバンは
二本の足踏みしめ、この空のもとを進む
神々の眠る時代に
たき火のあかりのもとで生まれ
浮かれさわいだプラスティック・バンド
メイド イン ジャパン アンド ユーエスエー
目をあざむく影のような
いつわりの大海にかこまれて

貧民の隊列はたちあがった
父よ母よ兄弟たちよ
すさんだこころで殺しあうのはやめよう
カラワンの歌声をきいてごらん

つぎのあたった汚れたズボン
すわってギターをかなでるのは
傾きかけたオンボロ家
はきづめの靴一足のビンボーぐらし
故郷グラーの乾いた川では
老人ばかりが夢をみる
たとえ雨が燃え 火は消えても
牛車の歌は敗北をうたわない

  長い旅路 行列つくり
  男も女も肩ならべ
  行こう、同じこころの人たち
  この車の輪はもう戻れない (くりかえし)

グラー、グラー
「空に雨滴なく、地さらに乾いた砂あるのみ
涙のすじは血となって 地をひたす……」

朝の森に光がさして
あらゆる植物をやさしく暖める
おいで兄弟たち、友だちみんな
ぼくたちの声で目をさましておくれ
カラワン、カラワン…………
カラワン、カラワン…………


晶文社 1983年7月15日発行  





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