チョコで「絆ぐるぐる」

さとうまき

最近イラクと日本を行ったり来たりしている。あまり日本のニュースを追っかけていなかったのだが、特定秘密情報保護法の話を聞いてびっくりした。こういう法律がものすごく簡単に衆院を通過してしまったことも。

東日本大震災では、世界中から支援が集まった。イラクやヨルダンその他の途上国も支援してくれている。しかし、日本はそんなことはすっかり忘れ、経済成長、日米関係ばかりを気にしている。先日は、アメリカが、シリア政府が化学兵器を使用した確固たる証拠をつかんだので、攻撃すると言った。日本は、アメリカに情報を見せてもらい、アサド政権が使ったと判断するに足るとして、攻撃を支持したが、「証拠」は、国際社会どころか、アメリカの議員も説得できないお粗末なものだったのだ。一体、日本が何を見せられたのかは、「秘密」だという。

公明党の大口議員は、「(法律がないと)日本は、某国から情報が入ってこなくなる。どの国とは言いませんよ。大量破壊兵器の情報が入ってこなくなる。国際テロの情報が入ってこなくなる。これは日本の国民の生命 身体、財産を傷つける、しっかりとした的確な情報が入ってくるなら紛争を未然に防げる。正確な情報が入ってくると外交政策、防衛政策を誤らない。」と国会で説明したが、情報を分析するリテラシーすら持ちえない国に、秘密情報保護法が出来たら、イラクのような戦争に加担しても全部秘密にしてしまえば責任を取らされることはない。そういう魂胆なのかとも疑ってしまう。

日本は、そんな排他的で閉鎖的な国になってほしくない。そこで、今年のチョコレートは、「絆ぐるぐる」世界にまわして平和を創ろうともくろんだ。

【アカベコにかけた願い】
福島の復興のシンボルにもなっているのが赤ベコ。会津に伝わる伝統玩具だが、首が揺れてかわいらしい。赤い牛は神社建立に、最後まで重い荷物を運ぶことができたという伝説から、赤ちゃんが生まれたら無病息災を祈願して赤べこを送ったという。それで、僕たちは、イラクのがんの子どもたちが早く治るようにと赤ベコをお土産に配っている。

北イラクは、シリア難民が20万人くらい入り込んできて、路上には物乞いの子どもたちも増えている。私たちの事務所があるアルビルは、イラクで悪化する治安をよそに、クルド人たちががっちりと治安を守ってきたのだ。そのおかげもあり、経済成長も著しい。しかしアルビルから少し離れると、これといった産業もなく貧しい生活を送っている人たちも多い。

今回、チョコのパッケージの赤ベコの絵をかいてくれたイマーン(8歳)は、モスルに住んでいたが、治安が悪化して避難してきた国内避難民だ。アルビルからは100キロ離れたソーランというところの空き地に勝手に家を作って住んでいる。2009年1月(当時4歳)に急性リンパ性白血病で入院。1年半の化学療法がうまく行ったかと思われたが、2010年に頭痛と痙攣が続き、再発を確認、放射線治療をうけたが、2012年12月に頭痛と視力低下を訴え、骨髄を調べたら再発していることがわった。輸血が原因と思われるB型肝炎も発症しているとのこと。彼女が救われる可能性は骨髄移植しかない。同行した井下医師の説明だと、「今年の暮れが山かな」という。

イマーンちゃんの部屋に行くと、薬がきついのかぐったりと寝ていた。
ちょうどごはん時だったので、「ご飯食べないの?」と聞くと「いやだ」とそっけない返事。「おじさんといっしょに食べよう」とスタッフのイブラヒムがしつこく誘うと起きてきて、話し始めた。「もうすぐしたらわたしのおうちには雪が降るので、雪をまるめて友達にぶつけて遊びたいの。ひひひ」とお茶目に笑う。

「隣の人が、鳥をたくさんかっていてね。一羽もらったの。でもね、死んじゃったの。きっと熱が出たんだと思うの。それでね、もう一羽くれたの。そしたら、また死んじゃった。きっと熱が出たの」
イブラヒム「お医者さんに連れ行けばいいのに」
「お医者さんは、鳥なんか見てくれないでしょ。隣でね、猫飼っていてね。それが、鉄砲で撃たれて死んじゃったの」
イブラヒム「なんだか、死んじゃう話ばかりだね。動物は何が好きなの?」
「馬が好き」
イブラヒム「馬は高いからロバを買ってあげようか?」
「ロバはいうこと聞かないからいらない! 全然かっこよくないし。この間、近所の黒い牛が追っかけてきて、とっても怖かったの。だからひよこが好き」
イマーンの話を聞いているととても楽しくなってくる。生きてほしい。
チョコ募金でどれだけがんの子どもたちを救うことができるか、今年のチャレンジが始まった。

チョコ募金出だしが遅れています。是非皆様ご協力をお願いします。
12月2日から受付開始です。http://www.jim-net.net/choco/