119 アカバナー4 ぴー

藤井貞和

「師父よもしもやそのことが
口耳の学をわずかに修め
鳥のごとくに軽跳な
わたくしに関することでありますならば」……(野の師父)
と、宮澤賢治はここまで書いて
「軽跳」という語でよかったか
誤字のような気がするし、と
でも藤井さん、軽跳でゆきましょうや はは
と賢治はわらう、振り返りながら

「そのこと」とはなんでしょう、賢治さん
作物への影響
二千の施肥の設計
そうね、施肥と「風のことば」(のどにつぶやく)

わらうはずはないね、藤井さん
前月にはあけがたの奈良の鹿のぴー 尻から出すおならの音で眼を覚まし
今月は「かげぐち」とたたかいましょう、百の種類と言いました
わあ 百も数えるのです。 しかも「思いを尽くして
ついに知り得ぬものではありますが」と
賢治は言います。 ぴー、知り得ぬことと知りながら
でも一つ一つ、畝に沿って播種のように
施肥を続けましょう、この世への施肥

(富山妙子さんのイベント「海からの黙示」へ出かけました。シカゴ大学のノーマ・フィールドさんたちのサイトには富山さんの絵が使われています。ゲーテの「魔法使いの弟子」たちが集まりました。富山さんは言う、「3・11からあとの日本社会は、厳粛な祈りの時にあって、近代が犯した何かを、償おうとしていたし、私〈富山さん〉も絵をかき続けた。それが一年も経つと、どうだろう。近代が滅んでゆく。ぶちこわしてゆく日本。それでも次代への贈り物をかき続ける」と。制作を始めて二年目、異形の蝶の死が発見されたという。「死して成れ、蝶よ」と、苦境にあるときのゲーテからのメッセージだと言う。すみません、曖昧な聞き取りで。鎌田さんは大きなスクープ「吉田調書」を押しつぶす一斉の反朝日キャンペーンとは何だろう、と問いかけていた。私もここに書いておこう。いちえふ(という漫画がある)から第二原発へ逃げてどこがわるい。おれだってヒラだから逃げるよ(とあのときおれもシンクロしていた)。東電社員の名誉が傷つけられた? 吉田はあとからであろうと「2Fに行った方が正しい」(幹部は別だろうけど)と、それを朝日が報道する理由はあるし、近代百年、新聞が「ごめんなさい」をさせられてきた数ある歴史のなかで、このスクープから調書が出てきた意味はもの凄く大きいね。三十年後に公文書館から出てきたって意味ないんだ。というより、国立公文書館あたりに眠る「資料」類はいろんな隠蔽工作の結果どもなんだから。そうさせなかった、今回の歴史への関与は新聞の役割そのものであり、施肥(ではない、是非)高く評価しなければ。)