ボクシング(3)

笠井瑞丈

1998年6月16日23歳誕生日
後楽園ホールのリングの上に立つ
C級ライセンスのテストを受けた
そして無事合格
僕はプロボクサーになった

ジムに届いたテスト日の通知に
6月16日と書いてあった時

「誕生日の日か…!!」

何か特別なものを感じた
だからもし落ちたら
もうテストを受けるのは
やめようと決めていた

一回だけの挑戦
受かって良かった

ただ僕は最初からプロの試合に
出たいと思っていた訳ではなく
プロライセンスというものに
挑戦したかっただけだった

とりあえず挑戦は成功した

1998年6月16日23歳誕生日
僕は合格とともにボクシングを辞めた

正確に言えばそれから二ヶ月は続けていたけど
僕の中でもう情熱が消えてしまっていた

プロボクシングの世界で通用する器ではないことを
最初から自分でも分かっていたからだ
いいところプロライセンス取得止まりだろうと思っていた

情熱はボクシングからダンスに変わる
それからダンスをちゃんと習い始める

ダンスの世界で通用しているのか分からないけど
とりあえずあれからずっとダンスは続けている
少なくともボクシングよりは向いているのかと思う

数年前ふとジムの前に行く
もうジムは無くなっていた
もぬけの殻になっていた

ジムは晩年経営難になっていたそうだ
夜逃げのごとく会長は失踪したそうだ

そんな話をある人から聞いいた

今会長はどこで
何をしているのだろうか
ふとそんな事を考える

世界6度防衛
名チャンピオン
小林弘

雑草の男と
呼ばれていた

すぐ枯れる綺麗な花より
雑草のような力強さを持っていた
だから6度も防衛出来たのだろう

僕は花よりも
雑草と呼ばれる方が
素敵だと思う

またいつかボクシングをやりたいと思う