未来の世界

笠井瑞丈

今新作の作品を作っています
出演者に私がダンスを始めた時から
憧れの存在である伊藤キムさんが出てくれます

私が初めてキムさんを見たのが
確か10代後半だったと思います

長男の爾示さんに
「おもしろダンサーがいるから見に行かない」
誘われ渋谷の劇場に見に行った覚えがあります
その時の舞台美術に兄貴の知り合いが
関わっていたという事もありましたが

この時が

父以外のダンスを見る
初めての体験でした

なので

私の初めての

『ダンス体験』

紛れもなく

『伊藤キム』

です

その作品を見てとても強い衝撃を受けたのですが
そこから
ダンスを始めるという所には至りませんでせした

ただただ

『伊藤キム』

という名前が私の頭にインプットされ
月日が数年経つことになります

そこからダンスを始めることなるのですが

まだダンスの右も左も分かず
どこでどうすればいいのだと

ダンスを始めるといっても
誰にどこで習うのだ!!!

その時にフッと
自分の頭の引き出しに

電話番号を調べよう!!

今のようにインタネット
携帯もない時代です
情報があまり出回っていない時でした
私がただ知らなかっただけかもしれませんが

父に番号を知っているだろうという

劇場関係者教えてもらい
電話番号を入手しました

そうしたらなんとうちの近所に
住んでいるという事まで知りました

そこから
長い時間電話の前に座り

カケル
カケナイ
カケル
カケナイ

母にいい加減にカケタらと言われました

一大決心

受話器を持ちしばらく続く呼びだし音

「はい」

あまりの緊張で自分の名前も言わずに開口一番

「ダンスを習いたいのですが」

「あっそうですか」

ガチャ

強い想いの枝を
ポッキと折られた感じでした

でも考えれば
当たり前の対応です
名前も名乗らずにいきなり
ダンスを習いたいのですが
となれば あっそうですか
としか言いようがないです

結局私は伊藤キムさんの所に通うことはなかったのですが
逆に通わなかったということから憧れだけはどんどん膨らみ
その後のキムさんの公演はほぼ欠かさずに見に行きました

初めて行った渋谷の劇場
あの時から自分のダンスは始まったのだ

公演が終わり
劇場を出た時
降っていた雨
寒かったよる

過去の思い出はよく想像できる

しかし

あの時はこんな未来は想像できなかった


来の世界


像の世界


想像の世界にダンスがあり
人と人は繋がっていく