吾輩は苦手である 4

増井淳

 吾輩は眠るのが苦手である。
 1年を振り返ると、「ああ、今年も眠れない日が多かった」と思う。
 だいたい1月下旬から5月下旬くらいまでは、花粉症で眠れない。この時期は、目がかゆい・くしゃみがでる・鼻水がでるの三重苦で、夜中に起きない日はほとんどない。眠ったと思うと猛烈な目のかゆみで目が覚める。目薬をさしてまた横になるが、今度は鼻がつまって目が覚める。鼻を何度かかんで横になると、次は何度もくしゃみが出て目が覚める。これを繰り返しているうちに朝がきてしまう。
 花粉を防ぐためにマスクをしたまま眠ることもあるが、しばらくすると息苦しくなって目が覚めてしまう。新型コロナが流行する前から、マスクは手放せない状態だった。
 「花粉症に効く」というものは、すぐに試してきた。べにふうき茶、甜茶、ルイボスティー、ヨーグルトなどなど。どれも「効いた」と感じたことはない。
 病院で薬をもらって飲むこともあるが、なんとく身体がだるくなるし、一時的に症状が出ないだけで効果は長続きしない。
 夜中にくしゃみをした瞬間にギックリ腰になったこともあった。その時は、朝まで同じ姿勢のまま動けず、眠れないだけでなく、同じ姿勢のままじっとしていなければならず、はなはだ苦しかった。

 6月になると花粉症もおさまり、ようやく少し眠れるようになる。
 安心したのもつかの間、すぐに暑い季節が始まる。
 暑いのはきらいではないが、汗が出るほど暑いと眠れない。タオルで汗を拭いたり、パジャマを着替えたりしているうちに空が白んでくる。我慢ができずにクーラーをつけることもあるが、吾輩はクーラーが苦手である。クーラーの風が身体に当たると、それが気になってなかなか眠れない。さらに長時間クーラーをつけていると咳が出て目が覚めてしまう。

 暑さがおさまったら、秋の花粉症が始まる。春より症状は軽いが、やはり眠れない。
 そして、次は寒さが襲ってくる。
 吾輩は寒いのも苦手である。
 寒くなれば布団や毛布を何枚かかけて眠る。するとその重みでなかなか眠れない。しかし、枚数を減らすと、今度は寒くて眠れない。
 暖房をつけて眠ると、空気が乾燥して咳が出て目が覚めてしまう。

 かようにほとんど一年中、眠れない日が多い。
 よって昼食をとったあとは、だいたい眠くなる。椅子に座っているだけで、ついウトウトしてしまう。その勢いで布団に横になると2時間くらい眠ってしまうのだが、そうすると、夜になっても眠くならないのだ。

 今年は秋の花粉症がひどい。夏に暑かったせいだろうか、鼻水が止まらない。しかし、そろそろ寒くなってきたし、花粉もおさまる時期だ。今夜は安らかに眠れるだろうか。