スタバをボイコットしてイエメンコーヒーを飲もう

さとうまき

僕は、30年前にイエメンで仕事をしていたのだが、内戦が始まってしまいあっという間に追い出された。イエメンは、幸福のアラビアといわれてきただけあって、荒涼とした砂漠、灼熱の太陽、狡猾な石油商人、テロリスト、そんなイメージとは裏腹に美しさがある。ディズニー映画に表現されるエキゾチックなロマン?そんなものをはるかに超えて、ぶっ飛んで美しい。このかわいらしい町並みは何だ?レンガ造りの建物には小さな窓があり窓枠には白い漆喰が塗られ、ステンドグラスがはめ込められて、、それを文章で表現できたらなあと思うのだが、残念なことに僕は詩人ではないのだ。

イエメンといえば、コーヒーが発祥した場所。その昔オランダ人が門外不出のコーヒーの苗木を盗んでから世界中に広まった。オリジナルのコーヒー、モカ・マタリ。このコーヒーを飲んでみれば、イエメンの美しさそのものが味わえる。天日干しのためか果肉のフルーティな香りが残る。そして酸味とローストした苦みのバランス。それがコーヒーのアロマな甘みとしてまとめられたときにかおる「幸福」! 猫が、またたびをなめたときのあの感じなのだ。

それで、僕はイエメンのことを思い出したくなったら、モカ・マタリを飲む。それで僕は、コーヒー商人になってイエメンのコーヒーを売り歩いているのである。しかし、コーヒーが売れない。なぜならば、うちのコーヒーは、ガザへの寄付が含まれるので、スターバックスのコーヒーより高いのだ。そこで僕は考えた。「スターバックスは、悪いコーヒーだよ」とデマを流すことを。

「皆さん、スターバックスはユダヤ人が作った会社です。イスラエルにお金が流れています。彼らは、ガザの虐殺に加担しているんですよ!そんなコーヒー飲めますか?」
そうだ!そうだ!というわけで、スターバックスをボイコットしよう!パレスチナが解放されるまで。

「スターバックスのコーヒーがなぜ茶色いか? ガザの人たちの血が混ざっているからだ!」
そうだ!そうだ!スターバックスをボイコットしよう。

「そして、皆さんが飲むのが、サカベコ・コーヒー! イエメンのフェア・トレードコーヒーです」
そうだ!そうだ!サカベコ・コーヒーを飲もう!

というわけで、スターバックスの売り上げは落ちていった。
ちょっとまって! スターバックスは、物言いをつける。
https://www.starbucks.com.kw/en/starbucks-middle-east

「スターバックスは、イスラエル政府にお金を渡したことは一度もございません。私ども、イスラエルには一店も店舗はございません。1999年にクウェートの富豪アルシャヤグループとフランチャイズを展開し、バーレーン、エジプト、ヨルダン、クウェート、レバノン、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、トルコ、アラブ首長国連邦といった国でアラブの皆さま、イスラム教徒の皆さまに愛され続けてきたんですよ。」

なるほど。僕は友人に相談した。
「いやいや、スタ-バックスの労働組合が、パレスチナを支持してる!とSNSに投稿したら、それを会社側がつぶしにかかったんですよ。だからやっぱりとんでもない会社だ!」
そうだよな!そうだよな!
「サカベコ・コーヒーは、パレスチナを応援します。そして売り上げはガザに寄付します」
そうだ!そうだ!スターバックスをボイコットしよう。

でスターバックスの人は「いや、あの投稿ですね。パレスチナを支持するという文言はともかく、投稿された写真が、ハマスの戦闘員が、ガザの壁を壊して、これからイスラエルの市民を虐殺に行くところの写真だったんですよ。これを見たユダヤ人だけでなく、一般の市民が、『スターバックスは、ハマスが行った子どもの虐殺や女性のレイプ(1200人が殺された)を支持するのか!もうスターバックスにはいきまへんわ!』と電話が殺到しましてね。もう本当にわしら、おいしいコーヒー出しているだけなのに、政治的な話はしたくないんですわ。」大体こんな感じ。

スターバックスは売り上げをどんどん落としていって、中東では2000人を解雇!マレーシアでは50店舗が閉店!そして、スターバックスは売上を落としながらもガザ支援に300万ドル寄付したらしい! ボイコット運動大成功!

あら、サカベコ・コーヒーは今まで20万円しか寄付できてない。で、解雇されたアラブ人はどうなるの?なんかかわいそうだなあ。僕は、こりゃ、スタバをボイコットする意味はないなあと思い始めたのである。

先日愛媛で、イエメンコーヒーを飲んでパレスチナを応援しようというイベントが行われた。マレーシアとインドネシアの留学生も来てくれて、彼女たちは、「私の国では、みんなBDS(ボイコット!投資しない、経済制裁)運動を頑張っています。私、日本でスターバックスやマクドナルド、ボイコットしてますが、周りの日本人はみんな平気でそういうお店いきます。そういう人たちは、虐殺に加担しているのかと思うと悲しくなるし、いったい私たちに何ができるのですか?」と質問され、僕は、先日調べたボイコット運動に関して得意げに話し出した。
https://note.com/maki_sakabeko/n/nbac29f1235ef
「実はですね、スターバックスも、マクドナルドも、それぞれの国の別会社でアラブの国やイスラムの国では、むしろガザの人道支援へ寄付しているんですよ。よく調べてボイコットするかしないか決めましょう。」とアドバイス。「スターバックスは、ユダヤ人がCEOだということで、イスラエルの虐殺に加担しているというような思い込みはレイシズムにもつながるよね! スタバやマックをボイコットしたところで、戦争が終わりましたか?」

ただ、今回のボイコットでスタバやマックが、ガザに寄付しようという気持ちはあっても寄付するとなるとハマス支持といわれる可能性があり、躊躇せざるを得ない状況だったのを、後ろ押ししたと考えることもできる。
「スタバのコーヒー飲んだからと言って虐殺を支持したことにならない?」
そうです!飲んでいいんですよ!実際BDSマレーシアのHPを見てみましょう、スタバはボイコットの対象になっていない。

みんな、モヤモヤしたものが吹っ切れたようで帰って行った。
あら、サカベコ・コーヒーは?
https://sakabeko.base.shop/