古屋日記 2025年12月

吉良幸子

12/1 月
今日の公子さんの夢。昨晩は未来永劫に金ピカになるペンキをライオンのたてがみに塗ってしまい、取れへんのにどうしよ!と焦ってたらしい。金ピカのライオンんの隣であたふたする公子さんかわいいやないのん。

12/5 金
今日は12日公演の稽古の日。黒テントの稽古場に集まって、当日「一眼國」を一席する兼太郎さんと役者陣を合わせて見てみる。夏の稽古からあんまし変わってない感じやけども、大丈夫やろか。本番まであと1週間。

12/6 土
最近公子さんが小豆からおしるこを作ってくれはった。ミッドナイト・キッチンで煮込んで、朝起きたらできておる。これがむっちゃおいしい!甘さが絶妙で、これ食べてたらチョコレートもケーキもいらんなぁ~なんて言いながら、お餅を入れてぺろっと食べた。

12/9 火
演芸場は今月後半にある、外部での特別公演の準備で休館日が多い。ということは出勤日が少ないっちゅうことやけども、そんなんお構いなしで来月のデザインが私のところに流れ込んでくるやないか!今日中に目処をつけとかんとどうにも間に合わん仕事で、夜遅くまで事務所に籠る…途中まで経理の人と話したりして楽しかったのやけど、その人もあがってしまいひとりぼっち。さすがにこれ以上続けても集中力が持たんと日付が変わる頃に引き上げる。家が近くてよかったんやけど、逆に残ってしまえるのも考えもんやなぁ。

12/10 水
友人の展示を見に吉祥寺へ。久しぶりに中央線の方に行くとやっぱり遠く感じる。電車に乗らん生活になってるし、久しぶりの着物で腰紐をきつくしすぎてちょっと乗り物酔いまでしてしもた。師走の吉祥寺は平日でも人がいっぱいで、賑やかなんにつられて商店街で小豆とお餅を買うた。また公子さんにおしるこお願いしようっと。

12/12 金
今日は10月から毎月やってる落語会の最後の本番!着いたら役者陣に太呂さんまで早々と到着してて、みんなで設営して準備した。差し入れに熊本から段ボールが届いてて、開けてみるとローズマリーと南天の実が敷き詰められた中に野性味あふれる大小のみかんがいっぱい!食べてみると市販のみかんよりうんと甘くておいしい。お客さんにも食べてもらうべく、木戸に置いてみなさんに配った。今日は私の知り合いもたくさんいらっしゃる日で、なんと演芸場の若女将まで来てくれはった!ありがたい!!本番終わって一安心、みなさん楽しかったと帰りがけにお声がけしてもらって嬉しかった。

12/13 土
昨日の今日で疲れてはいるんやけど、予定の関係で知人の展示へ。しかも今日は三鷹!!遠いっ!と思いきや、大きい駅もすっ飛ばす急行が運よく来て、意外にもすんなり着いた。今回は3人のグループ展で、絵柄がみんな優しく、出展者たちの調和がある展示やった。

12/19 金
今日は演芸場、外部特別公演の初日。一昨日に準備に行ってきたんやけど、慣れた場所やないしあっちへ走り、こっちへ走りとてんてこまい。そしてなんせ大きい施設は乾燥が酷くてかなわん。水分をたくさん手に、行きしなに神社で無事をお願いして現場に入る。お客さんを見ると、いつも演芸場で見知った顔を発見してちょっと安心した。こちらまでご来場ありがとございますと世話話できる人がおるのはなんか嬉しい。今日から3日間、バタバタとするやろけどとにかく前向きにがんばろ。

12/22 月
特別公演が終わってさすがにダウン。なんせ風邪引きがいっぱいやったし私ももろたんやろなぁ、喉がものっすご痛いし鼻かみすぎでおもろいくらい鼻の下真っ赤っか。今日は休みと決め込んでよくよく寝る。夕方、今日は冬至やんかいさ!と気づき、ゆず湯を求めて近所の銭湯へ行った。家の近くに2つ銭湯があんねんけど、まだいっぺんも行ったことなかった方へ行ってみる。受付に人懐っこいおっちゃんがいはって、今日はゆずいっぱいだよ!と言われた。入って見てみると、確かに想像の2倍くらいの大量のゆずがネットに入って泳いでおった。なんの変哲もない町の銭湯なんやけど、お湯が熱めで嬉しい!水風呂も水が柔らかいのか、足つけても刺さるような冷たさがなくて心地いい。湯冷めがなくて最高なとこ見つけたわ!と思いながら上がり、ドライヤーを使おうかと思ったら、20円10分の表記が…。10円2分の間違いやないのん、と思い、そばにいたおばあちゃんに聞くとほんまに10分らしい。こんな長いのん聞いたことないがなと笑った。帰りしな、コーヒー牛乳を1本買ったら、ヤクルト1本とゆずひとつをお土産につけてくれた。なんちゅうサービス精神旺盛な銭湯なんや…!

12/23 火
今日は久しぶりの通常公演。知ってる小屋に帰ってくるとなんとなく安心する。特別公演おつかれさま会しようと、一緒に働くお嬢と仕事終わりに飲みに行った。このお嬢、いや代表一家は結構酒が強い。やし、二軒目まで行って久しぶりにしこたま飲んで酔っ払って夜中に帰った。帰ってソラちゃんに絡むも迷惑そうな顔。公子さんに寝なさい!と言われ、死んだようにぐっすりと眠った。

12/25 木
今日はクリスマスではなくて千穐楽。西洋のおやすみ気分なんて全くないまま、年内最後の公演を見送った。お客さんたちには、良いお年を!と声をかけたけど、旅芸人たちにはもう来月の現場が見えてるからか、年内最後という感じもなく荷造りが進められた。そらそうか、あんだけの大・大荷物をまた別の場所に運ぶのは大抵のもんやないしな。

12/27 土
今日は我が誕生日!ということでお出かけするべくちょっくら上野東照宮へ、御狸さんがいはるということで狸顔が参拝してきた。参拝目的やったんやけど、建物の彫刻があんなにすごいと思わなんで、ゆっくりじっくり見さしてもろた。特に透塀の上下にいる、動植物の彫刻が生き生きとして見事で、屈んだり背伸びしたりしながら長時間鑑賞した。ええもん見してもろたわぁ…という余韻に浸りながら鳥居を出ると、茶屋がある。寒くて小腹もすいたしうどんでも食うか~と気軽な気持ちで入ると昔にタイムスリップしたような空間。日活の脇に出てそうな陽気なおじいがラーメンすすりながら喋りまくってて、その隣には蕎麦を待つ無口なおっちゃん。あいてる机の隣の人に、ここいいですか?と声をかけると、スキンヘッドに薄く色の入ったサングラス、右頬にでっかいサソリの彫もんがあるという人で、いいですよ~どうぞ~と話してみると意外に柔らかい。店員の下町育ちらしいさっぱりとしたおばちゃんは、おねえさんこんなとこ来て大丈夫?ごめんね~と終始謝ってはって、大丈夫です!と、私は私で、変な映画の世界に入ったみたいやなぁとワクワクしておった。たぬきうどん一杯500円、代金は品物と引き換えに。しめた、ここはまだ令和に追いつかれてない!喋り続けるおじいの話を聞きながら、隣ではサソリのおっちゃんがシナチクをつまみに酒飲んでて、私も相槌うちながらおうどんぺろりとたいらげた。
遊園地のアトラクションでも入ったような気持ちで、おもろかった~銭湯でも行って帰るか~と不忍池のほとりを歩いていると、したまちミュージアムを発見。ふらふらっと入ってまたもや昭和を満喫した。その足で燕湯へ。今日も日が高いし貸切状態!松屋あたりにはあんなにいっぱいの人が歩いてて、ここに来うへんの不思議やなぁと思いながらお湯につかった。家に帰ると公子さんも風呂帰りらしく、ポカポカのまま近所の蕎麦屋へ。最近、佐原の酒蔵、東薫の生酒がおいしくてふたりしてハマっておる。蕎麦と生酒とちょっとしたつまみで最高の誕生日やった。いつもやったらそこまで酔っ払わんのやけど、風呂上りなのもあり酒が回る。公子さんはぐっすりおやすみやけど、私は二階のさっぶい部屋に上がって今日したまちミュージアムで見た長屋の部屋を思い出す。…ここ数年、欲しいけど扱い切れるのかと迷ってた、私の部屋に足らんもの、それが火鉢。酔ったまま古道具屋のサイトを開き、思わず注文してしもた!あはは~やっちまった~!とか思いながら、年内に届いたら嬉しいなぁと呑気に眠りにつく。

12/28 日
公子さんが小学校の頃から知っている、アキさんがおうちでやってはるお料理教室に行く。ちょい遠いけど、幸いなことに乗り換えはそこまで多くない。行きしなにお手製のリリアンで編み物しながら、公子さんと大田区を目指して電車に揺られた。今日はタロットをしたり餃子を作る会。素敵なおうちに案内されて、まずはタロットで色々見てもろた。この方が滋賀出身らしく、久しぶりに聞く人の関西弁。やっぱり方言は人の距離をグッと近くするなぁと感じた。カードは概ね思ってた感じの内容で当たってるんやけど、気になるのがサソリのカードが2枚も出たこと。思わず昨日の茶店で会ったサソリおっちゃんのことを思い出した。なんかの啓示なのかしら…?
そんなことを話してる間に、他の人たちは餃子のタネをせっせと作ってくれてはって、私も包みのところから参加した。これがうまいこといかん~!でも不格好なのもアキさんがものすごい上手にきれいに焼いてくれはった。これがおいしいのなんのって!タネの味付けがうまくて、たれなしでも十分においしかった。

12/29 月
朝から火鉢が届いた!30センチくらいの手あぶり箱火鉢で、まだ何も入れてないとこに五徳を置いて灰たちの到着を待つ。ちゃぶだいの隣に置いてるだけで嬉しい。

12/30 火
今日は演芸場の大掃除。いつもの楽日ですら埃が結構出るし、心してマスク姿で向かう。煤払いに表の掃除と、普段できないところを念入りに。外で掃除してると、行き交う年末モードの人たちが、演芸場の方を見ながら綺麗ね~とか話してるのも聞こえて、俄然力が入る。椅子もひとつひとつ拭きながら、今年いったい何百人が座ったんやろなぁなんて考えたりした。みんなで手分けしてお昼過ぎに掃除はおしまい。最後に商店街へ来月のポスターを配りに回る。いかにも地元密着な仕事で楽しい。配った中にお好み屋さんがあるんやけど、久しぶりに行ったらもんじゃが食べたくなってお嬢と仕事終わりにちょっと寄った。相変わらずじゃりン子チエから出てきたみたいなお父さんとお母さんが焼いてくれるお好み焼きはうまい。
夜、家に帰ったら火鉢用の灰と炭団が届いておった。年末の忙しい時期、連日の配送に頭が下がる。公子さんに見てもらいながら、記念すべき第一号の炭団に火をつけて灰に入れると、じんわりとあったかい。部屋全体がぬくくなる訳じゃないけど、見てるだけで嬉しくなるかわいさ。寝るときどうするとか色々と公子さんに聞いて、びびって換気もしっかりしすぎ、冷たい風を家に入れまくりながら火鉢生活が始まった!

12/31 水
朝起きてすぐに灰の中に埋めてた炭団を起こすと、まだ火種が残っておった。長くついてるねんな~と感心する。昨日はお湯を沸かしてみたし、今日はお餅を焼いてみようと網の上にお餅を置いてじっと待つ。ちょっと目を離した隙にこげっとしたとこもあんねんけど、なんとなくトースターで焼くお餅よりおいしい!公子さんが作ってくれたおしるこにちゃぽんと入れて食べるのは至福の時間やった。
大晦日は王子、狐の行列の日。ひとりで行くのもなぁ…と考えていると、十条に住む友人から連絡が入った。旦那と行こうと思ってるけど、一緒にどう?とのことでふたつ返事で待ち合わせの約束をした。それまでに銭湯行くか!と、先に行ってきた公子さんと話してると、そんままの格好で行ってもいいよ、と…その格好っちゅうのが、おばあちゃんからもろた黄色に赤のチェックが入った派手なちゃんちゃんこで、こんな銭湯行きまっせって格好で家から出てもいいんですか!?と思わず聞いてしもた。でもまぁ、下町やしええや!と意を決して小脇に風呂桶抱えて下駄で銭湯へ。案の定、道端でおばちゃんに話しかけられた。銭湯の方はというと、みんな宵の口に来てしまったようで貸切状態!お湯の中で、3べんおでん屋の口上を言い終わるまでは湯から上がれん!と決め込んで、これから夜中出ていくのに備えていつもより長めにあったまった。
待ち合わせの時間に合わせて家を出ようとすると、先に着いたという友人から連絡があり、すんごい人、それも外国人ばっかし!とのこと。半信半疑で王子きつね村なるちょっとした露店が出てる場所に向かうと、王子稲荷の前からすんごい人だかり、それも90%くらい外国人!ええぇー…と、人混みが嫌いな私はクノイチの如く人の合間をすり抜けて待ち合わせ場所に行くと、大通りに更にすごい人だかり。北区のどこにこんな人がおったのか、いや、他からわざわざ来てるのか!?と不思議にさえ思った。友人と無事落ち合ってとりあえず串団子を買う。歩道の行列が見えるところで少し待ってたら年が明けた。と同時に行列が始まり、獅子舞を筆頭に後ろには狐の面や化粧をした行列が続く。大きい狐の顔の面を持ってたり、中には籠に乗った女の子まで、ゆっくりと厳かに鈴を鳴らしながら歩いてる姿を遠くからぼんやりと見ると、ほんまに人間に化けた狐がちょっとは混じってるかもなぁと思わせる感じがあった。大通りを行列が過ぎ、その間に近道して王子稲荷の方へ。行列してても初詣に行けるらしいとのことで境内に入る列に並ぶ。と、ちょうど獅子舞がやってきて、行列のみなさんと同じタイミングで境内に入り、旧年の感謝と新年のご挨拶をした。いつも演芸場の出勤の前に来てる時は掃除してるおっちゃんしかおらんのに、打って変わって見たことないくらいの人だかり。同じ場所とは思われへんなぁとその活気にびっくりした。火鉢をはじめたのもあって火伏せ凧をいただき、甘酒飲んで帰宅する。公子さんは村民だけでする小さい踊りやと思ってはったらしく、今晩の観光イベントみたいになってる話をすると驚いてはった。ソラちゃんは何のこっちゃの顔でメシの要求。年が明けてもうちはいつも通りや。