まだそのころ、火はなかったって。 世界の最初、
藁が火になろうとしたって。 ぼくは火になろう。
ついで、樹皮が、希望して火になろうとしたって。
軍歌が敷地を埋めていたって、もう いっぱいに。
学校のうしろは崖になっていて、抵抗できなくて、
藁がまっさきに落ちていったって。 「さよなら」、
ぼくたち。 樹皮はあとを追いかけるかのように、
「さよなら」、ずるずる落ちていったって。 崖下。
土偶と土偶とは手と手とをとりあって落ちたって。
ころころ転がる土製の丸い面は遮光の目を閉じて。
そのあとはもうだれが落ちたのか判らなくなって、
全校で死亡33名、負傷85名、逮捕者はかずを、
知らず。 夕方までに、女性徒は釈放されたって。
先生方は血をながしてのたうちまわっていたって。
土偶よ 語れ、崖下の藁の死体から、火が生まれ、
樹皮の死体からきみの火が生まれたということを。
丸い土製の遮光の目よ 眠れ。 原始の炉のなか
で。 坊やもお寝み、悪い夢を見るんじゃないよ。
(あれっ、四大元素ってなんだっけ。土、火、水、空気だったか。木がはいるのじゃなかったか。方位はまん中が土、だったかな。秋が金。今日は火曜日、というわけで、空気曜日を作りたい。噴煙は空気を押し広げるためにできるかたちです。)