蓮の花

三橋圭介

2年前に蓮を購入した。すでに花のつぼみがついているものだった。睡蓮鉢に入れ、数日たのしんだ。色は白。その後、次の年を楽しみにまっていた。しかし葉もでてこない。もうだめかと思い、睡蓮鉢からだして放置していた。ただ、もしかして、まだ生きているかもと思い、少量の水は常にいれていた。3ヶ月くらい前だが、蓮からちいさな葉がでているのを確認した。めだか専用だった睡蓮鉢にふたたび入れた。葉は小さいが数週間で葉を増やし、ぐんぐん成長した。時期が遅いので、花は期待できないが、水面に浮かぶ睡蓮の葉は、めだかの日傘にもなって心地よい。

4日前、水草のなかに花芽を見つける。葉の速度と同じく、すぐに水面を越した。そして昨日、花が咲いた。2年前、白色だった花は、なぜか濃い紫に変っていた。水面に顔を出したその花は、息を呑むような美しさだ。花が咲くときに音がするとよくいわれるが、音はしなかった。きっと人間の耳では聞こえないくらいの音はするだろう。ただ、かたく結ばれていたものが開くとき、「ぽん」とはじけた音がしたような気がするのかもしれない。あるいは日本の情緒的な心がそういう音を求めている。わたしは現実には聞かなかったが、聞こえそうな気がしたし、心のなかで聞いたのかもしれない。2時間くらい花が開いていくのを見ながら、時々、写真を撮ったりした。

月を見ていると動いているのを実感することができる。どこかに視点を合わせ、そこからすこしずつ月が動いているのがわかる。花は、その生の変化を実感するには、微細すぎてとらえどころがない。しかし30分前とは明らかにちがう姿を発見することができる。蓮の花は3日ほど起きたり睡ったりを繰り返す。今日は2日目、もうすでに午後なので花は咲ききった。あともう1日楽しみがある。

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