緑苔に坐る99─新繭隠り

藤井貞和

春駒が(どこに)
そらにかける
身体の声は
繭を恋してる

新桑に
天からの滴は
ゆたかな
露の玉づくり

白い繭よ
白馬になりなさい
天のつゆじも

天のつゆじもに包まれて
大きな結晶を
育てています

(「冷え冷えと今宵冷えゆく砂の国。アルベール・カミュきみがたたかう」。無論、でまかせの57577でしかない。「はくちょうの成瀬有、いまかけります。年の夜のそらに顕つか─流離伝」。年末に病室の天井を見つめることとなり、古代の空や〈うた〉をテクスト不在で眺める数日。年占としての春駒に祈りを込めた。この世界が悪化しようと、あなたは気のボールを大きく育てて。)