オトメンと指を差されて (46)

大久保ゆう

わたくし、このたび大発見を致しました。

といっても、おそらくその発見によって恩恵を受けるのはわたくしひとりなのですが、それでも、いやそれだけに、主観的判断からこの発見に〈大〉を冠することができるというわけで。で、そいつは何かと申しますと――

「床についているとき、横向きになって、その上で背中にブーメラン形のクッションをぴっとり合わせると、気持ちいい」

ということなのであります! いやこれは、これはこれは、まったくの盲点でございました。ということは、いわゆるボディピローというもの、これを我々は重宝しておるのでございますが、なんと抱きしめるよりも背中にぴったり当てておく方が気持ちがよいということなのですよ!

なんと、いやはや。

確かにボディピローは抱くことでその者に安心感を与えるものでありますが、抱きしめすぎれば力が入るわけで、起きたとき微妙に肩が凝っておったり、腕が変な方に曲がってちょい痛かったりします。それがどうでしょう、背中に置けば無理な力など必要なく、そこはかとない落ち着きが得られるのですっ!

置くべき場所が、間違っていたと、いうわけなのです!

使い方を、ひとつに思い込んでいたという、このていたらく!

この素晴らしき創造によって、わたくしの最近は快眠も快眠、むろん毎日は致しませんが、ちょっと疲れているときのとっておきの技として繰り出されるに至りました。これが私以外の人間にも当てはまるかは保証致しかねますし存じ上げません。

人間が睡眠を快とし二度寝が気持ちいいのは神の思し召し、人をそのように造られたからにほかならぬ、という思想がございますが(学生時分に中東の方からその説を拝聴して感銘を受けたものです)、それはけっして言い訳などではなく、神がそうしたのならば人もそれに従い励むべきでして、何度も申しますようにわたくしその快を最大化するためには努力を惜しまないものでございます。

さて睡眠の際に重要なことと言えば、もちろん〈香り〉もそのひとつでございますよね! よね!(押しつけがましい)

眠りにつく際どのような香りがしているかは、リラックスにも直接関わってくる話ですから、何よりも気に掛けねばならぬ要素です。と言えば、おそらく人はアロマだとか何だとかをベッドのそばからどうこう、ということをお考えになられるかと思いますが――甘い! まだまだおぬし想像力がお足りになりませんぞ。

わたくしも一時はアロマキャンドルやアロマのお香であれやこれやしていたものですが、あるときふと気がついたのです。あれ? これって、確かに便利だけど、おのれの鼻からいささか離れてはいないか、と。

そして考えたのです、鼻に最も近きところ、それは――枕! いや枕カバー!――だとすれば、そもそもいい香りがしなければいけないのは、部屋の空気ではなく、枕、枕カバーそのものではないのか!

そうすれば、てくてく歩きながら、わたくしは思いを巡らせるわけで、枕カバーの香りにもっとも影響を与えるのはいかなるものか、じかに香水を振りかけるわけにもいかぬ、ではでは何だ……うむそうか、おのれのシャンプートリートメントであるか!

ということで、わたくしの髪を洗うものは、わたくし好みの香りがすることがいちばんの基準となりましてございます。

そして、さらにさらに、あえて香りを愉しむために思い切り顔を真っ正面から埋める頭を預けるところであるならば、枕カバーの感触もよいものでなくてはならない、ということで、となればやはり、まるでぬいぐるみのようにふかふかふわふわの、タオル地であるのがよいのでは、よいのでは、よいのではございませぬか!

そんなの面倒だとか、なかなかないとか、お高いとか、あるいは旅先ではどうするのかとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、答えは簡単、お手持ちのお好きなタオルをお巻きになれば、あるいは旅先にもふかふかのタオルを持ってゆけばよいのであって、それだけでほら! あなたの枕はすぐにふわふ〜わに変わるのですっ!

(※ですので、わたくしの例の持ち運び用小型マイ枕にはいつもタオルが一緒にありました!)

快眠ライフとは、お金なんかなくても、ほんの少しの知恵と手間でもたらせるもの、いつもいつも、わたくしそんなことを楽しみながら眠っているのでありました。