抽斗を開けると

時里二郎

抽斗を開けると
黄色いボタン
海といっしょに入ってた

お気に入りの上着だったのに
今はよそのくにのわたしのお気に入り
けれど ひとつ足りない黄色いボタン

抽斗のなかの海
黄色い夕陽のまあるいボタン

よそのくにのわたしは
ボタンを探しに
いつもここまでやってくる

途方にくれて
抽斗の海
ひかりをなくした
黄色い夕陽

抽斗を開けると
黄色いボタン
海といっしょに入ってた