ボクシング

笠井瑞丈

20代前半の時
ひと時ボクシングに
夢中になっていた時期があった

毎日ジムに通い
毎日同じメニューを繰り返す

ジムの会長は小林弘会長
元世界チャンピオンで
6度防衛した名チャンピオンだ

玄人好みのチャンピオン
あまり知られていないが

カウンターの名手で
『あしたのジョー』の
モデルになったボクサーだ

午後3時に必ず会長が奥さんと
車でジムにやってくる
僕はいつも少し早くジムに着き
ジムの前で会長が来るのを待つ
3時になったら誰よりも早く
一番に練習するのが好きだった
夜に行くと混んでいるのと
汗とワセリンの匂いそして
ムンムンとしたジム内が苦手だったから

夜はこれから世界を目指す
プロ選手も多いため
4っつしかないサンドバックも空いてなかったっり
怒声が飛び交い
ジム内の空気も
全く昼間とは違う感じになる

僕は別に世界を目指すとか
プロになろうとも思ってもいなかったので
昼間のまだ人も少ない時間に
サンドバックを叩いて帰るというのが丁度良かった

そんな中
昼間の時間に練習に来る
数少ないプロボクサーが一人いた
ほんと無口で挨拶しても頷くだけ
毎日毎日黙々と練習をする

会長は彼には特別厳しかった
もちろん一般練習生ではなく
プロ選手なので
当たり前といえば
当たり前でなのですが

毎日しごきに近い練習を
顔色変えず耐えている姿に
僕は何か憧れみたいなものを感じていた

これがプロボクサーなんだ

根性気合いそのような事で
精神の向上を図る時代であり
拳闘という匂いが残っていた最後の時代だったと思う

(次月に続く)