2月某日 吉田亮人さん写真、矢萩多聞さん著『はたらく動物病院』『はたらく庭師』(創元社)が届く。着々と刊行される写真絵本のシリーズで、これで合計6冊に。日常生活と地続きのところにあるさまざまな仕事を丁寧に紹介する、すばらしい企画だと思う。
2月某日 神奈川・横浜の本屋 象の旅で、文芸評論家・エッセイストの宮崎智之さん監修選書フェア「随筆復興宣言」がはじまる。「宮崎さんほか話題の作家陣による、自著とおすすめの随筆・エッセイ作品をご紹介いたします」という企画に僭越ながらぼくも参加することに。ちなみに選書したのは以下の3冊だ。
永井宏『サンライト』(夏葉社)
山尾三省『野の道』(野草社)
藤本和子『イリノイ遠景近景』(ちくま文庫)
サウダージ・ブックスとして、フェア用に推薦コメントを集めた小冊子を制作することになった。編集を終えて自宅事務所で100部印刷し、大急ぎで折り作業を終える。なんとか初日に間に合い、我が家から電車で30分ほどのところにある書店に持参した。店主の加茂和弘さんからお店で人気のあるエッセイ本のことを教えてもらい、選書作家のひとり早乙女ぐりこさんの著書『速く、ぐりこ!もっと速く!』(百万年書房)を購入した。
象の旅を辞して、近くにある横浜橋商店街を散策。昭和感の残るアーケード街には中華料理店も韓国料理店も、中国東北地方・延辺朝鮮族自治州の料理店も並んでいる。喫茶店に入り、早乙女さんの『速く、ぐりこ!もっと速く!』を読む。タイトル通り、内容も文体もスピード感あふれるもので、夢中になって一気に読み終えた。これは、現代日本のビート文学ではないだろうか。
2月某日 ダンサー・振付家の砂連尾理さんが認知症の人や高齢者、介護者や関係者などと取り組む「とつとつダンス」。東京・中野の水性という多目的スペースで、アート系の一般社団法人torindoの企画による記録映像の上映と関係者のトークイベントが行われることになり、2日間参加した。2016年に刊行された砂連尾さんの著書、『老人ホームで生まれた〈とつとつダンス〉』(晶文社)の編集を担当したことがきっかけで、「とつとつ」のその後を追い続けている。京都・舞鶴ではじまった活動は現在、海を越えてシンガポールアやマレーシアでも展開中。砂連尾さん、torindoの豊平豪さん、映像作家の久保田テツさんたちとひさしぶりに会い、学ぶことが多かった。
帰りに中野ブロードウェイの自主制作本ショップ、タコシェに立ち寄った。
2月某日 世界文学の読書会にオンラインで参加。課題図書は韓国の作家ハン・ガンの小説『回復する人間』(斎藤真理子訳、白水社)。
2月某日 東京都立産業貿易センター浜松町館4階で開催、ZINEフェス「詩歌と日記」というイベントに出店した。サウダージ・ブックスの詩集や随筆集、自分が編集や執筆で携わったZINE『次に読みたいK-BOOK!』(チェッコリ)、インディー文芸誌『SLOW WAVES issue4』(なみうちぎわパブリッシング)を販売。ブースにお立ち寄りいただいた皆様、関係者の皆様、ありがとうございました。
ZINEフェスでは近くで出店していたミランダ雪乃さんの短歌と写真の本『東京で生きる』『東京の恋』、式島染さんの歌集『Addiction』を入手した。ひとりで店番をしているので会場全体をゆっくり見て回ることができなかったが、イベント終了間際に、佐々木里菜さんのZINE『ティミッドとティンブクツーのあいだ』を駆け込みで購入。さっそく、帰路の電車内でこのZINEを読む。カート・ヴォネガット・ジュニアの作品に由来するタイトルもデザインも、日記本として時間の不在を表現するアイデアも最高だ。
2月某日 仕事の打ち合わせで東京・神保町へ。三省堂書店神保町本店(小川町仮店舗)に、ZINE・リトルプレスのコーナーができたと聞いて訪問した。サウダージ・ブックスから刊行した大阿久佳乃さんのエッセイ集、『じたばたするもの』も平積みにしてもらってうれしい。しかも、本書で言及した岩波文庫を右隣に並べるなど、心憎い棚づくりの工夫に感激した。ZINE・リトルプレスのコーナーから、蟹の親子さん『増補版 にき 日記ブームとはなんなのか』を選んで購入した。日記ブームとはなんなのか、知りたいのだ。
その後、共同書店 PASSAGE 3号店のSOLIDAで、昨年からずっと探していた越前敏弥さん『訳者あとがき選集』(HHブックス)、仲俣暁生さん『本の町は、アマゾンより強い』(破船房)を買った。ベテランの翻訳家とベテランの編集者による自主制作本。神保町で奇しくも、仲俣さんが「軽出版」と呼ぶ小さな本を買い集める一日になった。
2月某日 三重・津のブックハウスひびうたで自分が主宰する自主読書ゼミにオンラインで参加。課題図書は石牟礼道子『苦海浄土』(講談社文庫)の第4章。生きること、働くこと、誰かとともにいることについてみんなで考える。