シラス漁のはじまりし伯父の家熱し
声から先に茹(う)で上がりつつ
校庭の大空たかく放られて
上履きひとつ逃げ去るごとし
古タイヤ燃やすけむりの上に月
案山子のごとき農婦うごかす
一発でみんな失格になればいい
ひだり周りに走る白線
入隊後2、3㎝は伸びるらし
朝鮮人民軍兵士の背丈は
キャタピラーは毛だらけの猫灰だらけ
毛虫のような人柄をいう
月の海海の月かもサンタ舞い
セロトニンにはカラオケが効く
「アカイ、アカイ、アサヒ・・・」の上にひかり射し
目映かりけり朝日ジャーナル
花冷えの京の町屋の人模様
ツケで飲みだす画商は長閑
ユスラウメに薄ら笑いのひびきあり
公的年金受給の年に
最終の下り電車は遅れがち
ホームの客はみな西を向く
本キャベツ紫キャベツ花キャベツ
芽キャベツ芽花キャベツ同根
時計屋と通じ合うごと小鳥屋は
眼力のみに占う未来
堕ちろという声に振り向く闇の中
ダムの水路の八重桜夢
カンヴァスの絵の具の奥の月明り
秋の星座を結ぶ筆先
啼く蝉の声を恃みに教会へ
ひとりわかれて告解へ行く
虫下し飲み飲みひとはそのむかし
花粉症とは無縁の日々を
寒すぎて暖かすぎて早すぎて
それでもたいへんよく咲きました。
*懲りずに、連句にふたたび挑戦。といっても、相変わらずの連句擬き。いわば擬密句三十六歌仙夏篇。