アジアのごはん(74)米とぎ汁還元水

森下ヒバリ

1週間前からバンコクに来ている。いつものアパートを月極めで借りて住んでいるのだが、ここには台所がない。アパートメントに台所がないのはタイではふつうである。台所がなくても外食文化がたいへん発達しているタイなので、食事に困る事はない‥ないのだが、ワタシはお米を研ぎたくてうずうずしている。しかしそれは、「あ〜、お米を研いで、ご飯を炊きたい!」のではなくて、ヒバリは「お米を研いだ、とぎ汁がほしい〜!」のである。

とぎ汁? そう、あの白く濁ったお米のとぎ汁。日本の自宅では、3年ぐらい前からお米の一番めのとぎ汁の濃い白いものに、白砂糖大匙1を加えて数日置いて作る、米乳酸菌液を毎日仕込んでいる。これは豆乳ヨーグルトの種にするほか、毎朝の(あ、朝ぶろ派です)お風呂にだいたい500ミリリットルを注ぎ込んで乳酸菌入浴剤にする。この乳酸菌液入りのお風呂が気持ちいい。のだが、話はこの最初の濃いとぎ汁のことではない。2回目、3回目の薄まってきたとぎ汁のことである。

「残りのとぎ汁も栄養分とかありそうだな〜、でも飲んでもおいしくはないし、そのまま植木にやるのはよくないし‥」と思いつつ流しに捨てる日々。岡山の田舎の家では台所の流しの端に2リットル紙パックの上を切った入れ物にとぎ汁が入れてあって、よくごぼうなどが突っ込んであった。アク出しにいい、と母親は言うが、臭いよこの液。そう、とぎ汁は放置しておくと臭くなる。とぎ汁の活用法として、掃除に使うとかアク取りに使うとかは聞くが、こんな匂いがするのを使うのはちょっと‥。

以前、中国雲南省・シーサンパンナの景洪に旅した時に、おいしいセルフの食堂で白い液体が鍋に入れて置いてあって、みんな自由に飲んでいた。何だろう?おいしそうに見えたので、ヒバリも一杯。味も何もついていないそれは、お米のとぎ汁だった。特においしくもなんともなかった。なぜみんな競って飲むの? 中国のほか、韓国でもお米のとぎ汁をスープの出しに使ったりする。ふむふむ。

去年フェイスブックを始め、「TGG(豆乳グルグル)ヨーグルト同好会」というのを見つけて参加してみた。そこで知ったのが「3(み)とぎ水」である。なんとお米のとぎ汁は、一日置くことによって、どういうわけか酸化還元値がものすごく高まり、いわゆる還元水になるというのだ。

「酸化還元水」というのは、つまり酸化(老化、サビ、劣化)を元に戻す力である還元力を持った水ということである。いわゆる水素水などもその一種。これには電子のやり取りが絡んでくるのだが、まあその化学は苦手なので説明は省かせていただくが、これまでほかしていたお米のとぎ汁が、一日置くだけで、汚れ落としに使えたり、野菜や魚を数分浸けておくだけでピチピチぷりぷりに復活したり、肌に塗るとしっとり、飲むと身体の老廃物をだして体を活性化してくれる、すごい水になってしまうというのである。

ほんまかいな‥。さっそくお米を洗って、作ってみましょう。まずは2合のお米をさっと洗って水を流す。そして1回目の米とぎ。この濃いとぎ汁は、ペットボトルにとって砂糖と合わせて米乳酸菌にするために仕込む。さて、2回目。このとぎ汁もガラスの入れ物に取っておこう。そして、3回目。だいぶ濁りが薄まってきたが、この薄さ加減がいいらしい。ガラスの水差しに取る。だいたい1リットル分ある。そして翌日・・2回目のとぎ汁は少しどろんとしていて、少し匂いがある。ので、これは植木にあげよう。そして3回目のとぎ汁を、野菜や魚の下ごしらえに使ってみると、いい感じ。いわしはぷりぷりに、野菜はしゃきーん。すごいぞ、還元水。

飲んでみた。あれ、なんとなくおいしい、ような気がする。いやな感じはまったくない。身体にしみじみくる感じ。あの、とぎたてのとぎ汁とはあきらかに違う水だ。なかなかいける。これすごく体にいいんじゃないか。ただ、2日置くとちょっと匂いがするが。

酸化還元力というのはORPメーターというものがあり、数値として測れるので、それを入手してうちのお米のとぎ汁還元水の数値を測ってみることにした。プラスの数値が高いほど酸化力が高く、低いほど還元力が高い。ちなみにもっとも酸化力の高い酸素は+850mv、もっとも還元力の高い水素は−420mvである。だいたい+200以下から還元力があリ、体に良いとされる。

うちの水道水は+330mv。水道水の全国平均は+500mvというから優秀ではある。浄水器の水は−256〜-76mv。うちの浄水器は簡易型の水素水浄水器なので、ちゃんと仕事しているね。さて、お米のとぎ汁を1日置いたものは? なんと−400mv! 日によって数値はもっと悪くなることもあるが、だいたい3回目のとぎ汁を置いたものはすべからくマイナスで、強い還元力を持っていた。高いレトルトパウチ入りの水素水や、水素水発生装置を買わなくても、そういう水素水に勝る還元力をもつ水が簡単に手に入るのである。しかも、これまで流しに捨てていたお米のとぎ汁から!

基本的にマイナスの数値を出すものはアルカリ性であることが多いので、このお米とぎ汁還元水は一気に大量に飲まないで、コップに半分ぐらいをゆっくり飲むのがいいだろう。食後すぐはさける。胃酸過多の人にはぐいぐい飲んでもらってもOK。

しばらく飲んでいるうちに、すっかり体になじんできた。はっきりいって高い水素水浄水器の水より還元力は高いし、体に自然な感じがする。でも見た目がほんのり白く濁っているので、こんなもん飲めるかっと思う人もいるだろうなあ。でもとても体によいので、思い切って試してみてください。

とぎ汁還元水は2日ぐらい置くと還元値は下がって来るし、匂いもしてくる。なので、保存は基本的にしないで2日で使い切る。残れば掃除や植木にあげる。お出かけの為に前日からペットボトルに詰めておいた還元水に少しレモン汁を少し垂らして外出してみたら、匂いもせず、まるでさわやかスポーツドリンクのようにおいしかった。後日、豆乳ヨーグルトの提唱者飯山一郎さんのブログを見ていたら、玄米乳酸菌液を作る時によく臭みが出ることがあるが、その臭い匂いは枯草菌の仕業でかんきつ類の皮などを入れると防げるとのこと。とぎ汁還元水の匂いも同じなので枯草菌だろう。

残ったとぎ汁還元水をうすめて植木にあげていたら、植木がすっかり元気になった。いや、ちょっと茂りすぎかもしれない‥。いや〜すごいパワーだな、と感心していたら、ひと月ぶりに行ったいつもの美容院で「あれ、なんか髪の毛がいつもより多いですね‥。うん、10年前ぐらいの感じ」たしかにいつもより、頭がぼさっとなるのが早いな、と思って美容院に早めに行ったのだが、10年前のレベルとは。もともと髪の毛は多くて固くて太い質だったが、さすがに年と共に「人並みになってきました」と最近は言われていたのである。

そこで思い出したのが、3年ほど前に高性能水素水製造機を導入した友達から初めて水素水をもらって飲んでいたときのことである。この水を飲んでいると、髪の毛が以上に早く伸びることに気が付いた。いつもはひと月半〜ふた月に一度行く髪のカットであるが髪が伸びて伸びてどうしようもない。半月に一度美容院に行く予算はないので、友人の還元力の強力な水を飲むのをやめたら伸びる速度は元に戻った、ということがあったのだ。

還元水で髪がふさふさになった、などという体験談があるのかな、とネットで調べてみると、ありました。しかも白髪が黒くなったという話。しかも、水素水は飲むよりも肌や髪に直接つける方が効くとか。(水素水と、とぎ汁還元水の違いだが、これは還元力の元がすべて水素分子なのか複合成分なのかの違い)とぎ汁還元水をスプレーに入れて髪の毛と肌にスプレーすると、とてもいい効果が出そうだ。

肌につけると、しっとりして気持ちいい。もう化粧水は要らない。ああ、とぎ汁還元水だけでお風呂を満たしたら、どんなに気持ちがいいお風呂になるだろうか。お風呂を満たすだけの大量のお米をとぐことができないのが残念である‥。それにしても、冷や飯パワーにとぎ汁パワー、お米はほんとうにエライ! くれぐれも食べ過ぎには注意だけどね。

☆「豆乳グルグルTGGヨーグルト」(栗生隆子著 永岡書店 1000円)に白米の発酵液としてとぎ汁還元水のことがちょっと載っているので興味のある方は見てみてください。ただし、とぎ汁還元水には乳酸菌はほとんどいなくて、乳酸菌発酵液ではないです。
☆お米のとぎ汁還元水の作り方:お米(白米〜分搗き米)をさっと洗って、3回目のとぎ汁(薄く濁ったもの)をガラスなどの容器に入れて一日(冬は二日)置く。2日を目安に使い切る。そうじ、野菜や魚の下ごしらえ、スープのダシ、煮物の水に適宜加える、肌に付ける、髪の毛に付ける、飲むなど還元水として利用できる。飲みにくい場合はレモン汁を少し加える。
米とぎ汁乳酸菌液作りはちょっと‥と思った人もこれなら作れるでしょう。ガラスの器は洗いやすい形のものを選んでください。こまめに洗わないと匂いが出るよ。もう、お米のとぎ汁は捨てられません!