アジアのごはん(79)旅先豆乳ヨーグルト

森下ヒバリ

旅先でもおいしい豆乳ヨーグルトを食べたい‥。そう思ってバンコクに来る度にアパートで豆乳ヨーグルトを試し続けてきたが、なかなかうまくいかない。失敗に次ぐ失敗である。やっと固まっても、ああ、おいしい!という域に達しない。

バンコクで手に入る豆乳では、卯の花というバンコクの日本人が作っているものがおいしい。が、かなり濃いので飲むにはいいが、ヨーグルトづくりにはちょっと向かない。これで作ると出来上がったものはほとんど豆腐である。いや、これはこれで醤油をかけて食べられるからいいか‥。現地ブランドではOHAYOという看護婦さんの絵のついたものが無調整で品質が良い。これは砂糖入りとなしと2種ある。

肝心のヨーグルトの種であるが、旅先では基本自炊はほとんどしないから、日本で作っている米のとぎ汁から作る乳酸菌発酵液はないし、作ってもいられない。なので、玄米を直接入れて作る方式を試してみたが、臭くなりすぎてどうしようもない。玄米を水につけてつくるリジュベラック水でも試してみたが、常夏の国ゆえか、すぐに臭くなってしまう。白米でやってもだめ。

しかたがないので、豆乳に牛乳ヨーグルトの品質のいいものを混ぜて作っていた。これが一番安定してヨーグルトが出来て、味がましだった。しかし、やはり動物性乳酸菌(動物性食品を好んで繁殖するタイプの乳酸菌をこう呼ぶ)で作ると、ベースが豆乳でもなんか乳臭い。はあ〜、おいしい!と唸りながら食べるぐらいのレベルのさっぱり系豆乳ヨーグルトが作りたいよう。

しかし、ついに旅先で簡単に、しかもおいしく豆乳ヨーグルトを作る方法を見つけた。果物をヨーグルトの種として使うのだ。正確には果物の果肉や皮、種などに住んでいる乳酸菌に働いてもらうということである。日本で、アボカドの種、みかんやゆずの皮を豆乳に入れておくと豆乳ヨーグルトが作れることは知っていたが、米とぎ汁乳酸菌で安定して美味しいヨーグルトが作れるので、お試し程度に数回作ってみただけであった。しかし、米とぎ汁乳酸菌がない旅先でこそ、この方法がいけるじゃないか。問題は南国フルーツでもうまくいくかどうかだ。

さっそく、いつも食べているカットフルーツの店で買った、マンゴーとドラゴンフルーツの切り身をそれぞれ豆乳に投入。半日後、見事に固まった。どちらもちゃんとヨーグルトになっている。すばらしいぞ、南国フルーツ! マンゴーの熟れた切り身を入れた方はなぜかゼリーのようにぷるんぷるん。味はドラゴンフルーツの方が酸味がありおいしい。

これは楽しい。フルーツによって味がかなり違ってくるのだ。フルーツについている乳酸菌の種類に違いがあるということだろう。面白いのでいろいろ試してみた。

アボカドの種‥洗わずに入れる。なかなかコクのあるまったりとしたおいしいのができる。固まるまで他のフルーツより少し時間がかかるが。ただし、タイでは輸入品のアボカドは日本よりも高い。1個250〜300円もする。今回は雨季のチェンマイ産の安くて大きなアボカドが出回っていて、それで作ってみた。チェンマイ産は果肉があまり脂こくなくフレッシュな感じでおいしい。
熟したパパイヤ‥ん〜、一応ヨーグルトにはなるが、そっけない味。
バナナ‥え、なんでこんなにまずいの。バナナの果肉が時間とともに臭くなるせいかもしれない。これは食べられない。生のバナナをヨーグルトに混ぜてシェイクするバナナ・ラッシーはとてもおいしいのに、この味の落差はけっこうショック。バナナは出来上がったヨーグルトに混ぜて食べよう。
デーツ‥ナツメヤシの実を干したものである。これはなかなかコクがあっておいしい。ドライフルーツなので、移動の多い時にも携帯できて便利。ヨーグルトが出来たあとの実も柔らかくなっておいしい。干しアンズなどもおいしそう。
パイナップル‥酵素が多いから固まらないかも、と心配したがするっとヨーグルトになった。パイナップルの酸味と香りが生きておいしいのができた。

果物種のヨーグルトはあまり種継できない。出来上がったヨーグルトを少量取ってヨーグルトを作るのは、せいぜい2〜3回が限度。でも、いくらでも種は新しく作れるので、あえて種継にこだわることもない。

日本でも米とぎ汁から乳酸菌液を作って豆乳ヨーグルトを作る、という工程が面倒であるとか、培養に自信がないとかいう人には大変おすすめの方法である。南国フルーツでなくてもまったくかまわない。果物の皮でもいいので、まずは無調整の豆乳を用意して、お試しあれ。まずは少なめの豆乳でやってみると早くヨーグルトが出来る。コップや適当な容器に100〜200mlの豆乳を入れて、さっき食べた果物の残りの切れ端や皮を(皮の場合はなるべく無農薬のものが望ましい)1〜2切れ入れて軽く蓋をして、今の季節なら部屋に置いて半日〜、寝るまでに固まらなかったら冷蔵庫に入れる、と出来上がり。少しとろっとしたあたりで冷蔵庫に入れて冷やすといい感じに出来上がる。感じがつかめたら量を増やせばいい。

夏は、うっかり長い間室温に置いておくとすぐ過発酵してしまうので要注意だ。分離してしまっても、かき混ぜて食べれるが、ちょっと酸っぱくなりすぎかも。分離したホエイで次のヨーグルトを簡単に仕込める。半日も時々様子を見てはいられない、という人は時間はかかるが最初から冷蔵庫に入れてつくればいい。2日ぐらいでヨーグルトになります。

無調整の豆乳で作る場合、日本では乳酸菌の餌として白砂糖を小さじ一杯加えるとよく発酵してくれるが、南国でフルーツで作る時は特にいらないようだ。もちろん、加えてもいいけど。

簡単に作れるフルーツ種豆乳ヨーグルトで免疫力を上げてくださいませ。今日は昼にパイナップル2切れで仕込んだ豆乳ヨーグルト、さっきとろりと固まっていたので冷蔵庫にしまった。明日が楽しみ‥。