アジアのごはん(60)ミラクル植物マルム(モリンガ)

森下ヒバリ

この夏に、タイで「視神経腫瘍」だと診断された。たしかに、春から目の調子が大変悪く、加齢による影響をはるかに超えて近くも遠くも視力が落ちていた。本を読んでいるとすぐに目が痛む。目の表面の痛みも、目の奥の痛みもあり、目の運動に目玉をぐるぐる回そうとしても重くてうまく回らない。何か病気だなとは思っていたが、こんな聞いたこともないような病気とは思わなかった。

で、その視神経腫瘍とは何なのか。調べてみると視神経を包んでいる鞘にできる腫瘍で、つまりはできものである。だが、場所が悪い。大きくなると視神経を圧迫して、視力低下、視野狭窄、ひどくなれば眼球が飛び出したり、視力を失ったりすることもあるという。悪性腫瘍ではなく、つまりがんではないので、転移はしない。

西洋医学での治療法は、外科手術による切除。ただし、繊細な場所なので術後はほぼ視野欠損が起こり、失明する場合も多い。え、それ手術する意味あるの。放射線治療も試みられ始めているが、症例が少ないのでまだ手探りの段階。え、それは実験台になれという意味ですか。

迷わずタイの薬草で治療することにして、バンコクの友人に、合う薬草をLET(オーリングテスト)でチェックしてもらう。「これはどうだろ。お、これはいいね。45日間でいいよ」と示された薬草は、タイ語で「マルム」(学名はワサビノキ属「モリンガ」)という木の、葉っぱを粉末にしたものである。マルムはタイでは、ごくふつうに生えているマメ科の高木で、葉っぱや若いさや豆を食べる。薬草というより食用の利用が多い。以前よく行っていたサメット島のアオキウビーチにこの木がたくさん生えていて、木からぶら下がっている若い緑色のさや豆をよく見かけたものだ。ドラムスティックという別名があるように、豆は細長い。直径は1.5〜2センチで長さは30センチぐらい。市場で売られている姿はあまり見ない。買うよりも庭先で取って食べる、もらって食べるというたぐいの野菜だろう。なので、一般的な料理屋にはメニューにのっていない。

その豆が食べられると知ったとき、どうしても食べてみたくて、タイ人の友達のスリンの家でマルムのゲーンソム(辛くて酸っぱいシチュー)を作ってもらったことがあった。煮込まれたさや豆はとろんとしてなかなかおいしい。豆は皮を剥いてさやごとぶつ切りにして煮込む。筋が残っていて、歯でしごくようにして食べる。

スリンの夫のソムサクが「ちょっと食べにくいね」と言うと「ソムサクのお母さんは子供に甘いから、食べやすいように筋をみんな取ってからゲーンソムにしてたんでしょ。でも、筋は深く食い込んでいるから、取ったら食べられる実が減っちゃうし、この筋にひっついている果肉がおいしんだから」とスリンにやり込められていた。

豆も葉っぱも大変栄養価が高く、タンパク質、亜鉛、鉄分、カルシウム、カリウム、ビタミンA・E・K・Cを豊富に含む。さらにポリフェノールもギャバも豊富なミラクル植物なのであった。成長も早いらしいので、庭があればぜひ植えたいところだが、日本では沖縄以外はむずかしそうだ。5℃以下では枯れてしまう。

これまでは野菜としか考えていなかったマルムだが、これから薬草としてお世話になるのだな。よろしく頼むよ、マルムちゃん。というわけで、薬草としてのマルムを調べてみると、栄養価同様、すばらしい薬効を持つ植物であることがわかった。

マルム(モリンガ)はインドの伝統医療アーユルヴェーダで何千年も前から腫瘍治療に重用されてきた薬草であり、東アフリカ、アラビア地域でも紀元前の時代から利用されていた。日本では「西洋ワサビノ木」と訳される。原産は北インド・パキスタン。

薬効はというと、民間薬としての評価だが、まずは強力な毒出し効果。腸の働きを高め、免疫力が上がる。抗腫瘍、抗がん効果。抗菌作用があり感染症にも有効。血糖値・血圧を安定させる。アレルギー体質の改善や自律神経の安定効果。冷えやむくみが解消されたり、更年期障害にいいという話もあるが、全体の免疫力が上がって体が活性化するためではないかと思われる。このほか肝機能を高める、リュウマチ・関節炎にもいい、とすごい薬効だ。お乳の出が良くなる一方、堕胎剤として使われることもあるので、妊婦は飲んではいけない。ビタミンKが多いので摂取制限のある人も注意すること。

わたしの「視神経腫瘍」には45日間、朝晩葉っぱの粉末2カプセルずつ飲めばいいとのこと。「え〜と、飲んでいる間は、薬の効果を高めるために、甘いものや肉類を食べないようにするといいよ」「え、菜食?」「う〜ん、セシウムの入っていない魚や発酵している卵は食べてもいい」

この助言はカンジタ菌の予防のためということだったが、その後キャンベル博士の「チャイナスタディ(邦訳は『葬られた第二のマクガバン報告』)」を読んで、動物性タンパク質ががんの主要な原因だ!と確信したので、9月に日本に戻って薬草治療に入るに当たり、乳製品と肉食をやめることにした。

視神経腫瘍はがんではないが、身体の異物であることに変りはないので、がんに有効な食生活にも有効だろう。そして放射能が降り続ける日本でがんを予防するためにも、いいんじゃないか、と。やはり失明、視野狭窄などという事態は出来うる限り避けたい。わたしは平静を装いつつ、内心ちょっと動揺しながら「視神経腫瘍」をなくすための養生生活を始めたのである。

養生の食生活の話は次回にすることにして、マルム(モリンガ)治療の経過を書こう。まあ、葉っぱの粉末のカプセルを毎日朝と晩2カプセルずつ飲むだけなので、何の苦労もない。飲んだ後、ちょっと胃が重い感じもするが、まあ問題なし。飲んですぐは取り立てて何の変化も感じられなかった。

2週間ほどたったある日、目を動かすときの重い感じが、半減しているのに気が付いた。むむ、これは効いている‥。45日が経過して、さらに目が軽くなったのを感じる。治ったのかもしれない。とにかく、かなり腫瘍は小さくなっているにちがいないぞ。目の奥の重い感じがない。少しカプセルが残っていたので、もう1週間ほど飲み続ける。

50日ほど飲んで、もらった薬がなくなったので、終了。目が軽い。本を長時間読んでも、あまり疲れない。やった!

1か月ほどるんるんと過ごしていたが、10日ほど前にライブで神戸三宮の町へ出かけたところ、目が痛くてたまらなくなった。鏡を見ると目がかなり赤い。神戸は京都よりもpm2.5が日常的にかなり高く、空気はどんよりかすんでいる。「かなり強烈に目に来たなあ‥」と思っていたら、その日からまた目が疲れやすくなってきた。

わたしはpm2.5の感受性が強く、まず目に来る。ぜんそくのように胸が苦しくなることも多い。この視神経腫瘍になったのもpm2.5(放射能入り)のせいではないかと疑っている。まだpm2.5が世間に認知されるかなり以前から、(黄砂はなんとか認知されていた頃)黄砂が飛んでくると、気分が重い、頭が重い、胸が苦しい、目が痛いという全身不調になるのだが、黄砂が観測されていない日でも同じような症状が起こることに気がついた。山の方を見ると白くかすんでいる。わたしは目に見えない黄砂と呼んでいたが、それがpm2.5だったのである。

強力なpm2.5のショックでまた腫瘍が活動開始したのかもしれない。マルムをもう少し飲んだほうがいいような気がする。今度は、日本でも入手可能なモリンガ製品をネットで探して、一番品質がよさそうなノニインターナショナルのセブ島産モリンガの粉末を買ってみた。粉末を細かくしてこれまでのものより3倍吸収率が高い、というエクセレント製品にしてみる。いままでカプセルで飲んでいたので、みどり色の粉末をお湯に溶かして飲むというのは初めての飲み方だ。う〜ん、もろに青汁の味。まあ、飲めないことはないな。それに、みどり色の粉末をかきまわして飲んでいると、モリンガの葉っぱを飲んでいる、というリアリティがあっていい。

朝方、猛烈におしっこにいきたくなって目が覚めた。あれ、昨日寝る前に水やお酒を沢山飲んだりしていないのに‥あ、エクセレント・モリンガのせいか。毒出し効果が高いものは、おしっこがよく出るようになるのであった。もちろんおっきい方もすこぶる快調だ。これはかなり効きそう‥。