メキシコ便り1

金野広美

お久しぶりですが、お元気ですか。

私はこちらに来てはや2週間がすぎました。ここは2200メートル余りの高地にあるため、頭痛が続き、着いて2、3日は眠ってばかりいましたが、最近はすっかりここでの生活にも慣れてきました。
私の住んでいるのはメキシコシティーの中心街でとてもにぎやかなところです。

着いた時は、お祭りでもあるのだろうかと思ったほどたくさんの屋台が所せましと出て、タコスや服、CD、DVD屋が大音響で音楽をかけながら、商売をしていました。しかし、これはお祭りでもなんでもなく、日常の風景でした。地下鉄やバス、市場、観光地など人の多いところに、テントをはっただけの屋台があふれているのでした。人々はよく食べ、よくしゃべり、いつも音楽にあわせ体を揺らせています。道路は車であふれ、信号は無視され、人々は止まった車の間をすいすいとぬけていきます。そして、土曜、日曜ともなると、公園ではマリアッチの楽団の演奏にあわせて、老若男女がダンスを楽しんでいます。ここは、働いている時以外はいつもお祭り状態の街です。

3日前には、世界遺産にもなっているグアナファトに小旅行してきました。ここは昔銀山で栄えた街で1810年スペインからの独立運動の始まったところでもあります。街中に張り巡らされた地下水道が、今では道路として使われバスやタクシーなどが走り、歩道もありすっかり生活道として定着している珍しいところです。街には色とりどりの家があふれ、とても楽しい気分にしてくれます。ここもまた、金曜の夜から日曜にかけては、音楽にあふれた街になります。私がこの街に着いたのがちょうど金曜の夕方。広場ではコンサートが始まっていました。ギター、マンドリン、ウッドベースをかかえた12人の男たちがセレナーデを演奏し、そのそばではおばあちゃんが踊っています。30分も演奏すると、彼らが、ちょうど鳥が尾を上にたてたような瀬戸物の容器にワインを入れ50ペソ(日本円で約500円)で売り出しました。CDを売るならともかく、いったい何なのだと思っていると、彼らは演奏しながら歩き出し、客は手に手にその容器を持って、彼らの後をついていきます。そして、迷路のようになっている小道を、音楽を聴きながら、ワインを飲みながら移動していきます。それは昔、チンドン屋について行き、帰り道がわからなくなった遠い日々を思い出させる懐かしい出来事でした。

また、ここでは毎年10月に国際セルバンテスフェスティバルが開かれます。海外から多くの音楽家やダンサー、俳優がやってきて、芝居やコンサートが約1ヶ月にわたって催されます。私もキューバの楽団、アルゼンチンタンゴ、メキシコのジャズとダンスの4枚のチケットをゲットしました。これだけ買っても8800円です。安いでしょ。バスで5時間かかりますが、何の苦もありません。

明日はフリーダ・カーロの展覧会が近くの国立芸術院宮殿で開かれるので行くつもりです。ここは総大理石でできていて、正面階段を上がると、四方がメキシコの壁画運動をになったリベラやシケイロス、オロスコ、タマヨらの壁画が迫ってくるギャラリーにもなっています。

このように、毎日メキシコ生活を満喫しております私ですが、来週の月曜からはいよいよ学校が始まるので、先生のスペイン語がさっぱりわからないという苦学の日々になると思います。