近所のランチ及び北上58号線。

仲宗根浩

ある日、お昼を外で食べようということになり、奥さんとふたりで近所を歩く歩く。奥さんがまだ食べたことがないタイの屋台料理屋さんはお昼の営業はしていない。すぐ近くのペルー料理の店は定休日がこっちの休みと重なっている。何もない、というかもう既に入った事があり、味がわかっている店しかない。この前開店したばかりの沖縄そば屋さんはいつの間にかもう店じまい。残っているのは昔からのランチ営業をやっている喫茶店や食堂ばかり。しょうがないので、母親と近場で食事となるとよく行くお寿司屋さんのランチに行く。お寿司屋さんといっても沖縄の魚料理やイカの墨汁も置いている店。ランチタイムにマグロカツ定食とかやっているのを以前食べに行ったことがあるので、そこのランチ未経験の奥さんを連れていく。メニューを見ると種類が増えている。魚のバター焼きがあったので注文すると、揚げた魚の開きにバターソースともいえない代物がかけられたものが出てきた。バター焼きはオーブンでじっくり焼かれ、ほろほろとほぐれる身にガーリックが効いたバターが絡んでいるものなのに。前もバター焼きと称しこんなのを出した店があったことを思い出した。魚は揚げると身のほろほろ感がなくなってしまう。その夜、行きつけの居酒屋のマスターに話すと「しょうがないよぅ。ちゃんとバター焼きしたら手間がかかるからねえ。」とあっさり言われた。そんなもんなんだ。お手ごろ価格で魚のバター焼きは食べられないんだ、と自分を納得させる。

それからしばらくして、子供も学校が休みの土曜日のお昼、「ペルー料理を食べに行こう!」と家族四人ですぐランチタイムと縁がなかった近くのペルー料理のお店に行く。土曜日なのでランチメニューは無い。ここは開店当初から炭火のいい香りをうちのアパートの階段あたりまで漂わせていた店。日系ペルーの家族の方々がやっていることは知っていた。店に入るとおねぇさんから分厚い料理に関して詳細な説明が書かれた写真付のメニューを渡される。子供二人は無難なもの、それもよそでもでも食べられるだろうというものをそれぞれ頼んだ。冒険心のないやつらだ。こちらは未知のものをが欲しいわけで、わたしはロモサルタド、奥さんはアロスコンボヨという料理を注文。美味しいではないか。別のテーブルの三人のスペイン語(おそらく)で話しているアジア顔の女性はインカコーラのペットボトルを飲んでいる。インカコーラは黄色なんだ。こっちは紫トウモロコシで作られたチチャモラダ、というのを四人で回し飲み。その後子供が注文したデザートのフランも一口食べたら美味しい。しっかりと肉を食した。

こんなことをしているといつのまにか、下の子の運動会が終わり小学校が代休となった翌日、職場でもらったリゾートホテルのランチバイキング割引券があった。当然平日だとかなりの格安になるため、実家の母と姉を誘い、その日まじめに登校した高三男子を除き五人で久しぶりに国道58号線を北上しリゾートホテルへと向かう。奥さんから58号線は以前とは違い変な場所を通ると聞かされていたのでネットのマップで調べると新しいバイパスらしきものができている。実際車で走ってみると、十二年前の情報しかない愛車のカーナビは道が無いところを走っている。いつか元の国道58号線、それより以前の一号線といわれた頃、ひたすら海岸線沿いの道を車でたらたらと北上してみたいとおもったがいつになることか。