ムイファーが来た。

仲宗根浩

台風が来たのでいつものように仕事場はそれに備えて養生、最後の点検を終えて外に出た。腕や顔にあたる雨粒が痛い。駐車場へと歩いていると、頬をたたかれたように一瞬、風で顔が振られた。雨と風の音の中で何かが転がっていく。メガネが飛ばされた。暗いので探すことができない。仕方ないので車をメガネが飛ばされたところまで持って来て、ヘッドライトを照らし探す。なんとか見つかったのは左側半分。右側はあきらめ、車に乗り込み、裸眼のまま運転する。前が見えない。仕方ないのでなんとか見つけ出した左側だけのメガネを左手で左目にあて、右手でハンドル、ウィンカーを操作しながらトロトロ運転をする。木は六月の台風でだいたい倒されたり、折れたりしたので道に大きな障害物は無い。停電で消えている信号も無く家にたどりつく。

夜中、外はどんな具合かベランダの窓から見ると、逆さになったアンテナが一本のコードだけを頼りに風に揺れている。テレビはちゃんと映っているのでうちのアンテナじゃない。このまま風に飛ばされるのも危ないのでベランダの内側に入れて飛ばされないようにする。後日、アンテナを救ったお礼に上の階のアンテナの持ち主からロールケーキをいただく。

朝になると会社から電話で本日休業とのこと。昼間は二十分くらい停電があっただけでメガネ以外の被害はなく台風九号、ムイファーちゃんはゆっくりと沖縄を満喫していった。台風明けの旧暦七月七日、旧盆前の墓掃除に風が少し強いなかでかける。墓に着いてもどうやって手をつけていいやら。できるものだけきれいにして、花を活け、線香をあげ、母親と二人で旧盆を迎えることを伝える。

片方だけ残されたメガネは、もう右側のレンズだけ購入すれば済む。メガネ屋さんに行くと同じ型番のレンズは既に販売されてなく、結局新しく作りなおすことになる。思わぬ出費。教訓、「台風のときはメガネを外せ!」

台風の後、七月に注文しておいた新しいパソコンが来る。ノートとデスクトップの二台。デスクトップはガキ用なので接続は本人にさせる。ガキのデータファイルの移行も完了しおのれのノートタイプのパソコンのセッティング。まずメールのデータを移す。新しいOSに戸惑いながらもなんとか完了。使いにくいぞWindow 7。今まで使っていたプリンタ、スキャナーは十年選手なので対応のドライバがない。何か印刷するものがあればXPのパソコンにデータを移してやらなければならない。当分、新しい周辺機器は購入する予算がないので、XPのマシンにはもうしばらく働いてもらわないと。しかし新しいマシンは静かだ。ファンがぶんぶん音をたてて回ることはない。データの移動はすべて終わり、あとは整理するのみ。

旧盆中、休みはなくしっかりと仕事。仕事前に親戚まわりをする。今年のお中元、お米の産地を気にする方々が多い。いま流通しているのは去年収穫されたものなのに。これも放射能の影響。西表産の米を買い占める輩もいる。基地内で枯葉剤が使われていたことがニュースになり、戦闘機は飛行中に燃料を垂れ流し、基地内のアスベストが使われた建築廃材が基地の外に出いつの間にか出され、久米島の北にある劣化ウラン弾をしこたま浴びた鳥島の射爆場。沖縄のものだから安全、と必ずしもいえる状況じゃないとおもうけど。