基地より高校野球

仲宗根浩

一月から始まった、アパートのコンクリートでできた手すりというかフェンスの修理は屋上が終わり、うちの二階、いつも布団を干すところにイントレが組まれ、三階部分が始まった。型枠を作るための丸鋸、インパクトドリルの音。はつりの音。しばらくすると音は無くなる。また、いつの間にか始まる。一ヶ月くらいで終わるとのことだったはずだけど、雨が多かったせいかまだ終わらない。ひび割れたとこをちょこっと足で蹴ったら、コンクリートの欠片がすぐ落ちたので急いで元に戻した。三月になって布団が干せないのでベランダで風に晒すだけ。

三月のしょっぱな、起きてテレビをつけると、オリンピック閉会式をやっていた。オールド・スクールの自分では全然知らない、バンドやシンガーが歌っていた。あるバンドのギター・アンプ、メーカー名が、黒のガムーテープのようなもので隠されていた。そのアンプはどこから見てもマーシャルでしょう。音響メーカーとかスポンサーとの契約かなんかで隠すことになったんだろか。そういえば昔、NHKもピアノのメーカーのところ隠していたような。それでまあ、おもしろくないので、テレビを消して再び寝て、また起きてニュースを見ていたら閉会式の映像が流れていた。ニール・ヤング出てた。歌ったのは「Long may you run」ネットで動画を探すがない。あ〜〜〜〜〜。しょうがないのでこれまたネットでニール・ヤングの歌詞とギターのタブ譜があるサイトを見つけて、好きな「Hert Of Cold」をプリントアウトし、ひとりでニール・ヤングごっこをやる。ザ・バンドは自身のサイトで歌詞とコードを公開している。ジョニ・ミッチェルなんかは歌詞、コードのほかにいくつあるかわらない、ギターのチューニングとタブ譜までも公開している。日本のミュージシャン、サイトではこういうのはないよなあ。

ひなまつりに突然、メールソフトの送信だけができなくなる。Outlookめんどくさいぞ。あやしいぞ。なんなんだと怒りつつ、このソフトおばかが使うには機能がやたらありすぎる。でも前の仕事ではスケジュールとか、納期などは全部これで管理していたのだが、人間、二、三年使わない部分ができると退化するもんだ。一時的にWebのメールでしのぐか思案。休みだったのでいつものように、明るい時間から呑みはじる。ほかの事をぐだぐだやって、何気なく送信ボタンを押すと、ちゃんと送信できた。原因不明、昔よくあった、コンピュータの気まぐれ、新しいソフトを入れるとある程度の慣らしが必要なのか。その翌日、四月から小学校入学となる娘のお勉強机が来る。娘は去年、奥さんの実家で不要になった電子辞書の使い方を覚え、自ら勉強と称し、電子辞書にある医学百科から胃ガンの項目を紙に書き写すことに没頭している。やっていることは文字の模写。書き写したものの本人は読めないのでこっちが読まされる。面倒。机が来たおかげで部屋を広くするため物を捨てるための戦いが始まるというのに。

戦う前にまたまた、CD類が届く。マイルス・デイビスのプレスティッジ時代の14枚組、ウィルソン・ピケットのアトランティック時代の6枚組、ジェームス・ブラウンのコンプリートシングル集のVol.8、チャック・ベリーのチェスでのコンプリート集第三弾、ゴールドワックスのシングル集の完結Vol.3。やることはまず、中身の盤違いがないかチェック。輸入盤の場合よく、盤と実際に収録されている音が違うこと、ジャケットと中身が違うことが多いのでこれは必要。今はiTune経由でCDDBにアクセスして簡単に確認できるので便利になった。CDが増えることに文句を言われながらも作業。結果マイルスでジャケット入れ違いが一組あっただけ。

そんなこんなで年度末、アパートの契約更新、小学校の給食費等々の引き落とし手続きで、不動産屋さん、市役所、銀行に行く。帰るとニュースでは基地のこと。三月末がどうのこうの言っていたようだけど、どうせ何も変わりはしないのはわかっているので、とりあえず高校野球のテレビ観戦に集中する。そのあいだ人通りも少なくなり、静かになる。