冬もおわりか、まだ少しつづくのか

仲宗根浩

正月、家での食べ物はほとんど実家からのお裾分け。中身汁、三枚肉、かまぼこ、田芋の田楽、昆布などなど沖縄の正月に欠かせないものばかり。量をたくさん作るから暫くは同じものを食べることになる。中身はいわゆるモツで年末のスーパーやお肉屋さんではバットにこれでもか、というくらいに盛られ、三枚肉もブロックで並べられ計り売りされる。内地のバラ肉と違いこちらのバラ肉は皮付きで食べるので屠殺された後、毛の処理のためバーナーで焼かれる。子供の頃、肉屋さんが安全剃刀を使い、皮の表面に残った毛をきれいに剃っている様子をよく眺めていた。何年か前の近所の市場、開店前に肉屋のおじさんが豚の半身をさばいているのをちょっと見たことがあった。半身から肩、背、ヒレ、もも、あばら、ばら、豚足と分けていく。肉の部位の言い方も方言でメー、ボージン、ウチナガニー、チビジリ、ソーキ、ハラガー、テビチやチマグーというふうにあるけど、いまよく目にしたり、聞いたりする呼び方はソーキやテビチ、うでのつけ根部分のグゥヤー、ハラガーの三枚肉、レバーのチムくらい。旧正月に仏壇にお供えをするのでまた同じようなも のを食べることになる。

日本列島が寒気に見舞われると、こちらも一応、寒くはなる。昼間二十度あったのがいきなり、十五度を切ったりすると、厚着になるがセーターは持っていない。外に出ると風が強いのでトレーナー重ね着する。そんななかでも基地から夜の街へと繰り出す人たちは半袖。仕事帰りの車のなか、こいつらどういう皮膚しているんだろう、眺めつつ家に戻ると、外から叫び声と走る足音が聞こえたきたので、窓を開ける。すぐ近くで、五、六人で一人を囲み、袋叩きにしていた。止めようと大きな声を出す若いおねえちゃん、その場から走って逃げるやつ。しばらく入り乱れ、すぐにだれもいなくなった。久しぶりに見る、あめりかあ同士の喧嘩。

寒さのおかげで長引いた風邪も治り、ここ数日、あったかくなったと思ったら近所の桜の木の花が開いているのに気付く。車でよく通る裏道沿いには、ブロック塀のより高く桜とブーゲンビリアが満開だった。