イラク紀行(1)

さとうまき

イラク国内、シリア国境近くに出来たアルワリード難民キャンプに春の兆しが見えてきた。

かつて2000人近く居た難民が、移住先が決まりだし、キャンプを去っている。現在は1000人ほどになり、4月の終わりには、300人ほどになるという。

キャンプに入るには、イラクのビザがいる。ヨルダンでイラクのビザを申請した。担当の太っちょのおじさんに、「2時に取りに来てください」といわれた。事務所でくつろいでいると、「イラク大使館です」と女性から電話がかかってくる。いやな予感。
「確認させてください。ビザ申請は3名ですが、パスポートは、2人分しか提出していないのではないですか」
「はあ、意味がよくわからないですが」
「こちらには、2名分のパスポートが提出されています」
「いや、私は、3名分のパスポートを確かに提出しましたよ」
一瞬不安になりポケットをまさぐるが、ポケットにはパスポートはない。
「もしかして、パスポートをなくしたのですか?」
「い、いや、ただ確認をしただけです」といって女性は気まずそうに電話を切った。

パスポートがなくなったらどうしよう。日本に帰れなくなってしまう。日本大使館で再発行してくれるだろうが、私の飛行機はシリアから出発。シリアのビザは、どうするんだ! 不安に駆られているうちに2時になってしまった。とりあえず、大使館にいくと、太っちょのおじさんが、「いやー心配かけてすまなかったね。こういうことはよくあるんだよ。気にしない気にしない」と笑っている。よくあるって???

イラクは、サダム・政権崩壊後の2度目の国民議会選挙を控えている。確かに、復興の兆しも随分と見えてきたが、まだまだ侮れない。紆余曲折あって、結局、難民キャンプには私一人で行くことになった。2月24日から27日までキャンプに3泊して、今しがたシリアに戻ってきたのだ。さすがに、4日もキャンプに居ると、うんざり。特に、後半は雨に降られたので、閉じ込められた感じがした。難民たちは、長い人で5年間もこんな生活を強いられている。早くキャンプが閉鎖されることを願うばかりだ。詳しくは次回。(シリアにて)