赤いさいふ

くぼたのぞみ

赤いさいふがみつからない
はなさんがくれた
赤い革の
ちいさながまぐち
はじめて持ったさいふというもの
がみつからない
急斜面にはりついた
文殊の家で
裏山にのぼれば
線路のむこうにぼた山が迫り
みずは
滑車にむすんだ桶でくみあげ
ゆかしたに
猫の親子がすむ家で

とめごろうじいちゃんが
みつけてきた
どこにあった?
どこでみつけた?

大さわぎして
笑っておしまい
武人たるもの
と正座したじいちゃんの
膝のうえで
はんべそかいて
笑っておしまい

いまでもふいに夢にみるのは
みつからない
あしたのあたしと
はなさんの
とき