171火焔樹

藤井貞和

  葉 葉 実 蛇 葉           蛇 葉 実 葉 蛇
    葉 街路樹がこちらへ      葉  倒れてきます 
  倒れてきます 葉の 水煙が蛇に変わりました ああっ 雨の樹
    です 倒れるわたしに向かって氷を落とします 登って
     ください 鱗の階段 最初の卵がのぼります 冬の
      青空 三山(さんざん)におおやまとの風 畝
       に火 ああっ 葉の土器を編みます 塗る
         井戸尻 亀ケ岡 上野原 大ふね
          ああっ ちゅうくう土偶が倒
          れてくる さんないまるやま
          倒れてくる かしはら遺跡が
          倒れてくる しゃかどう遺跡
          倒れてくる 根を地底に張り

(火焔土器の写真を見ているうちに、宇宙樹だとわかりました。世界樹ですね。どうしていままで気づかなかったのだろう。古いのには蛇体がまじっているので、葉っぱにふさわしいと思いました。髪を振り乱した樹神です。根があって、幹があって、すらりと伸びたり、ずん胴で浅いのも、実を結び、怪物で、目があったり、寄生動物を擁していたり、上は天に届き、地面に踏ん張って、昔話の「豆の大木」みたいな、天神(雷神)と地面とのあいだをしっかり結ぶんだと気づきました。火焔でもよいか、燃える木。煮炊きもするらしい、土器は身体だから。土は神々のうんこです。土器はうんこから造られる、初夢です。)