恋――翠の石室55

藤井貞和

アオリスト2は、手紙にしよう、
ケ・ブランリーにて、
レヴィ=ストロース氏に出した手紙は、
僕が受けとったんです、
コンゴウインコありがと ったら

出したんです、二十一世紀から、
二十世紀への手紙。 未来のひとが、
肩を寄せると、現在の鳥の鳥肌が立つ、
なアんてね。 コンゴウインコは、
羽をむしられて、かわいそう ったら

僕が受けとったんです、
この恋は つばさをひろげると、
あなたを包む、ケ・ブランリー。
なアんても、さらに総毛立つのです、もう感激! ったら

(五十年まえの女の子が、子鳥を見てたんです、枝のうえに。子鳥ははなびらになりました、おっこちそうになって。でも、あなたが「助けて」と言ったら、はなびらは落ちなかったのです、ふたたび子鳥になって。──そういうことが起きるのは絵だからなんです。詩のなかで、そんな奇蹟は起きません。墜落して地上で眼が覚めると、きょうという日がはじまるだけなんです、つらい一日。)