烈火山4首 ――翠ぬ宝75

藤井貞和

「あさまやま」「あさましき世に」「さくらじま」「地を裂くらしも」「わが烈火山」

「黒雲の」「烈火」「来たりて」「尽くせども」「わが憤怒もて」「洗え」「今夜は」

「もろびとよ」「怒れ」「三十八度線」「新潟過ぎる分断」「創痍」

「かぐや姫」「あわれ火山の神という議論」「鋭(と)し」「史料編纂所教授」

(提灯行列を、話には聞くけれども見たことがないぞ。あれは敵の生首をあらわしたというぞ。「皆切り取ったる敵兵の首の形」とな。日清戦争〈明27〜28〉が終われば、金沢市内は鬼灯〈ほうづき〉提灯を三〇〇〇個、家々に掲げたぞ。ここの連隊だけで三〇〇〇の首級を挙げたということか知らぬぞ。しるしとはよく言ったぞ。くりから峠では七万という武者を抛ったぞ。鏡花『凱旋祭』〈明30〉は祭のなかでひとりの婦人を生け贄に供したぞ。軍卒らは清国女性への集団レイプをするぞ〈同『海城発電』明29〉。妻の愛人の処刑を眼前にみせしめる軍人の夫ぞ〈同『琵琶伝』〉。鏡花は描く、明治の男のかくもさもしき横暴の果てを。嗚呼、透谷は日清戦争を見ずして死んだぞ。「懸賞問題答案平和雑誌」〈明24〉12論文のうちには透谷の翻訳せしもあるか知らぬぞ。世は見よ、透谷から鏡花へ消尽するというぞ。)