118アカバナー3 かなしか

藤井貞和

折口はん、あんたのまれびとはうそや
そんなのいいひん、あらへん、神はん
いてはらへん  てんのうじの地震
もえつづけて六十九年 えらいこっちゃ

「かなしか、いう奈良の鹿見ゅーと
悲しか、ばい」 阿蘇の神はんと
かなで書くのやー 春日野の神はんと
あれはてたココロをあらそうかなや

ロードクでは、かっこがぬけるで
かなしかのこらん  とめたらあかん
書いたらあかん  かっこつかへん
鹿がぴー 鳴きます、若草山のてっぺんで

神ばいたいで書くのや  神しばいや
てんまんぐうの道行きや じょーろりや
天魔ばしから、手ぇとって往(い)の
いくののはしは生くの生かぬの

(七月八月、大阪と奈良とを過ぎながら。悲鹿〈かなしか〉)